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冬にも多い高齢者の脱水|認知症の方は特に要注意!

寒い季節になると脱水の心配をあまりしないかもしれませんが、高齢者は冬こそ特に注意が必要です。冬場の脱水は意外と多く、そのリスクは認知症にも影響を及ぼすため、軽視してはいけません。

今回は、冬場における高齢者の脱水について解説し、その予防策をご紹介します。

なぜ冬に脱水症を起こすのか

冬になると、気温が低いため汗をかくことが少なくなり、脱水の心配が減ると感じるかもしれません。しかし、実際には以下のような理由で体内の水分不足が発生しやすくなります。

  • 暖房の使用

室内で暖房を使用すると空気が乾燥し、体内の水分が失われやすくなります。特に加湿をせずに長時間暖房を使うと、気づかないうちに水分不足になることがあります。

  • 喉の渇きを感じにくくなる

気温が低いと、喉の渇きを感じにくくなります。そのため水分補給が不十分になりやすく、高齢者は特に注意が必要です。

  • 厚着による発汗

冬場に厚着をすることで、室内外の温度差から体温調節が難しくなり、汗をかきやすくなります。しかし、汗をかいても気づきにくいため、水分不足が進みやすくなります。

Memo

若い人の体内に蓄積される水分量は体重の約60%ですが、高齢になると筋肉の減少などで約50%に減少します。そのため、脱水症を起こしやすい体質といえ、日常的に注意が必要となります。

特に注意が必要な暖房器具

高齢者の脱水は、暖房器具の使用によって悪化することがあります。どのように影響するかは、暖房器具の種類によって異なります。

  • エアコン・電気ストーブ


エアコンや電気ストーブは空気を乾燥させるため、脱水のリスクが高まります。特に高温設定で使用すると、皮膚の水分が蒸発しやすくなります。

  • ファンヒーター


ファンヒーターも空気を乾燥させるため、同様に脱水のリスクがあります。また、風が強いため、体感温度が高くなり、汗をかきやすくなります。

  • 電気毛布・電気行火(でんきあんか)

電気毛布や電気行火は直接肌に触れるため、皮膚の水分を奪いやすく、脱水の原因となることがあります。特に夜間の睡眠時に長時間使用すると、脱水を起こしやすいため、注意が必要です。

  • こたつ

こたつの中に長時間いると、頭痛を感じることがあります。これは脱水が原因であることが多く、こたつが足元を温めるため、発汗によって水分が失われやすくなるからです。その結果、脱水のリスクが高まります。

電気カーペットも同様に床から体を温めるため、特に足元から汗をかきやすくなる暖房器具です。

高齢者は体の水分バランスが崩れやすいため、暖房器具の使用には注意が必要です。定期的に水分を摂取し、湿度を適切に保つことが重要です。

高齢者の脱水で見られる症状

高齢者が脱水状態になると、以下のような症状が現れます。

  • 認知症の症状悪化

脱水を起こすと血液が濃縮され、脳への血流が悪くなります。そのため認知力が低下し、認識や理解が難しくなることで混乱状態に陥り、落ち着かない症状(徘徊や強い拒否、暴言、抑うつなど))が強まります。

  • 便秘

脱水症は体内の水分不足を引き起こし、便秘の原因となります。水分が不足すると、大腸での水分吸収が増え、便が硬くなり排出が難しくなるのです。
便秘は自律神経の乱れに影響することから興奮状態を引き起こし、認知症の落ち着かない症状を悪化させます。

  • 注意力・集中力の低下

体内の水分が不足すると疲労感や体のだるさを感じ、ぼんやりとして集中力が保てなくなります。注意力も低下することで転倒やけがにもつながる可能性が高まります。

  • 循環器に影響

脱水により血液が濃縮されると、血液の粘度が高まり、心臓に負担がかかります。これにより、心拍数が増加し、血圧が上昇することがあります。特に高齢者は心血管系の疾患を持っていることが多いため、脱水が原因で心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まる可能性があります。

  • めまい・ふらつき

脱水状態になると、体内の水分不足により血圧が低下し、めまいやふらつきを感じることがあります。特に高齢者の場合、体のバランスを保つのが難しくなり、転倒のリスクが高まることがあります。

  • 皮膚の乾燥

特に冬は、空気が乾燥しているため皮膚が乾燥しやすくなります。脱水により皮膚の水分が失われると、乾燥してひび割れたり、かゆみを感じたりすることがあります。さらに乾燥が進むと、皮膚が赤くなったり、炎症を引き起こすこともあります

  • 頭痛

脱水は頭痛の一因となります。体内の水分が不足すると血液が濃縮され、脳への酸素供給が減少し、それが頭痛の原因となることがあります。また、脱水による電解質バランスの乱れも頭痛を引き起こすことがあります。

  • むせやすくなる

体内の水分が欠乏すると唾液の分泌量が減り、食べ物が飲み込みにくくなります。これにより、むせることが増え、食べ物が誤って肺に入ることで誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こしやすくなります。

これらの症状を予防するためにも、寒い季節だからと安心せずに水分補給は小まめに行いましょう。

Memo

認知症の方は特に冬の脱水に注意が必要で、ケガや命の危険に直結するリスクに関係します。例えば、薄着で外に出てしまい、家がわからず徘徊(はいかい)することで急激に体温が低下するかもしれません。注意力が低下することで暖房器具の管理ができず、やけどを負うかもしれません。

認知機能を良い状態に保てるよう、水分をしっかり取れる環境を整えていきましょう。

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冬場の脱水予防

冬場の脱水を防ぐためには、日常的に意識して行動することが重要です。以下の方法を参考にして、水分補給と湿度の管理を行いましょう。

定期的な水分補給

喉の渇きを感じなくても、定期的に水分を摂取するようにしましょう。特に食事の合間や入浴前後、運動後などには意識して水を飲むことが大切です。

高齢者に必要な1日の水分量は1,500mlを目安にするとよいでしょう。500mlのペットボトル3本分です。多いと思われるかもしれませんが、1日に排せつされる水分を考えると適正な量となります。

1日に体内から出ていく水分量は2,400~2,800ml。内訳は皮膚からの蒸発が700~1,000ml、便に含まれる水分200~300ml、尿が1,500ml。1日に体内へ取り入れるべき水分量は飲み物で1,500ml、食事から700~1,000ml、体内で作られる水分の代謝水が200~300ml。

湿度の管理

暖房を使う際には、加湿器を併用して室内の湿度を保ちましょう。湿度が適切に保たれていれば、体内の水分も失われにくくなり、脱水のリスクを軽減できます。

  • 加湿器の種類

【超音波加湿器】
水を振動させて微細な霧を発生させるタイプ。静かで電力消費が少ないですが、他の加湿器に比べてカビや微生物が繁殖しやすいため、水質管理が重要です。

【気化式加湿器】
フィルターに水を含ませて風を送ることで加湿するタイプ。自然な加湿が可能で、フィルター交換が必要です。

【スチーム加湿器】
水を加熱して蒸気を発生させるタイプ。効果的に加湿できますが、電力消費が多いです。

加湿器は部屋の中央や風通しの良い場所に置くと効果的に加湿できます。壁や家具から離して設置することで、結露やカビの発生を防ぎます。また、加湿器のタンクは毎日水を交換し、フィルターやタンクは定期的に掃除をしましょう。清潔な状態を保つことで、細菌やカビの繁殖を防ぐことができます。

服装の管理

室内外の温度差を考慮し、適度な厚着を心がけましょう。特に外出時には脱ぎ着しやすい服装を選び、体温調節をしやすくすることが大切です。

【重ね着】
脱ぎ着しやすいように重ね着を心がけましょう。屋内では軽めの服装にし、外出時には防寒具を追加するなど、体温調節がしやすいように工夫します。

【素材選び】
吸湿性や通気性が良い素材を選ぶと快適に過ごせます。例えば、コットンやウールなど、肌触りが良く、暖かさを保ちやすい素材がおすすめです。

【足元の保温】
足元から冷えやすいので、暖かい靴下やルームシューズを履くことで体全体の保温効果が高まります。ただし、滑り止めがないと転倒の危険が高まるので、注意して選びましょう。スリッパなども脱げやすく、高齢者には不向きです。

【マフラーや手袋の使用】
寒さを感じやすい首元や手元を温めることで、全身の体温を保ちやすくなります。外出時には必ず着用しましょう。

これらのポイントを取り入れることで、冬場の脱水予防が効果的に行えます。高齢者の健康を守るために、適切な水分補給と湿度管理、服装の工夫を心がけてください。

まとめ

冬場にも高齢者の脱水は見逃せない問題です。室内の乾燥や喉の渇きを感じにくくなることなど、寒い季節特有のリスクを理解し、予防策を講じることが重要です。

脱水を防ぐことは風邪や認知症の悪化予防にもつながります。必要量の水分摂取を日常的に心がけ、健康な冬を過ごせるようにしましょう。高齢者自身だけでなく、家族や介護者も注意を払い、一緒に健康管理を進めていくことが大切です。

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