介護をもっと楽にする 介護保険制度

【合算で節約に】高額医療・高額介護合算制度 シンプルガイド

2025年1月2日

医療や介護が必要な世帯では費用がかさみ、家計に大きな負担がかかることがあります。長期間にわたると経済的な負担がさらに膨らみ、やりくりが大変になることも少なくありません。

そんな時に活用できるのが「高額医療・高額介護合算制度」です。この制度を理解し、うまく利用することで、家計の負担を軽減することが可能です。

この記事では、この制度の詳細や申請方法についてわかりやすく解説していきます。

高額医療・高額介護合算制度とは

「高額医療・高額介護合算制度」とは、同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険の両方に自己負担が発生した場合に、合算して負担額が軽減される制度です。

例えば、大きな手術や長期の介護が必要なとき、この制度を利用することで、自己負担額が抑えられます。申請手続きもそれほど難しくありません。

高額療養費・高額介護サービス費との違い

それぞれの制度の特徴を分かりやすく比較するために、以下にまとめました。

【高額療養費支給制度】

  • 対象:医療費
  • 期間:1か月
  • 条件:医療機関や薬局で支払う医療費の合計が上限額を超える
  • 支給内容:上限額を超えた額が支給される

【高額介護サービス費支給制度】

  • 対象:介護費用
  • 期間:1か月
  • 条件:介護保険を利用して支払った自己負担額の合計が上限額を超える
  • 支給内容:上限額を超えた額が支給される

【高額医療・高額介護合算制度】

  • 対象:医療費と介護費用の合算
  • 期間:1年間
  • 条件:年間を通じて医療費と介護費の合計額が上限額を超える
  • 支給内容:上限額を超えた額が支給される

医療保険の「高額療養費支給制度」と介護保険の「高額介護サービス費支給制度」は、1か月単位で費用が上限額を超えた場合に支給される点が特徴です。

一方、「高額医療・高額介護合算制度」は、年間を通じて医療費と介護費用の合計額が上限額を超えた場合に支給されるため、医療と介護の両方の費用が多くかかる世帯にとって非常に有利な制度です。

この違いを理解することで、各制度をより効果的に利用することができます。

支給対象者

以下の条件(両方)に当てはまる世帯が「高額医療・高額介護合算制度」の支給対象者です。

  • 各医療保険(被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度)に加入している世帯:医療保険と介護保険の両方に自己負担があること。
  • 1年間の自己負担額が設定された限度額を超えること:1年間(8月1日~翌年7月31日)を通じて、医療保険と介護保険の自己負担合計額が設定された限度額を超える世帯。

※医療保険上の世帯と住民基本台帳上の世帯は異なることがありますので、注意が必要です。

1年間の自己負担限度額

「高額医療・高額介護合算制度」の上限額は、所得や年齢区分によって細かく設定されています。

※対象世帯に70~74歳と70歳未満の方が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用します。その後、残った負担額と70歳未満の自己負担合算額を合計した額に限度額を適用します。

高額医療・高額介護合算制度の計算例

どれくらいの金額が戻ってくるのか気になるところです。具体的に計算してみましょう

70歳未満/年収156万~370万円の場合の計算例です。
夫(69歳)自己負担額
医療費:35万円
介護費:20万円
妻(67歳)の自己負担額
医療費:20万円
介護費:8万円

医療費と介護サービス費を合算して83万円です。自己負担限度額は60万円なので、83万円から60万円を引いて16万円が医療保険と介護保険から比率に応じて支給されます。
70歳以上/年収156万~370万円の場合の計算例です。
夫(78歳)自己負担額
医療費:22万円
介護費:38万円
妻(75歳)の自己負担額
医療費:30万円
介護費:15万円

医療費と介護サービス費を合算して105万円です。自己負担限度額は56万円なので、105万円から56万円を引いて49万円が医療保険と介護保険から比率に応じて支給されます。

高額医療・高額介護合算制度の申請方法

次に、「高額医療・高額介護合算制度」の申請方法について解説していきます。手続きはそれほど複雑ではありません。

申請案内が届く

市区町村によっては、「高額医療・高額介護合算制度」の適用となりそうな人に「申請の案内」を送付してくれる場合があります。しかし、これは市区町村や加入している公的医療保険によって対応が異なるため、必ずしも案内が届くわけではありません

もし、医療費や介護費の自己負担額がかさんでいると感じる場合や、申請案内が届いていない場合は、保険者窓口に問い合わせて確認してみましょう。自己負担額の軽減に繋がる可能性があるので、積極的に情報収集を行いましょう。

申請窓口

【国民健康保険・後期高齢者医療加入者】
申請窓口:市区町村の窓口

【被用者保険加入者】
申請窓口:加入している医療保険者の窓口

申請手順

  • 市区町村へ「支給申請書兼自己負担額証明書交付申請書」を提出
  • 市区町村から「介護自己負担額証明書」が送付される
  • 「介護自己負担額証明書」を加入している医療保険者の窓口に提出
  • 医療保険者が市区町村へ支給額を連絡
  • 高額医療・高額介護合算制度を支給
この図は上記で説明した手順を重複して説明したもの。

申請について注意すること

申請手続きにはいくつかの重要なポイントがありますので、以下の注意点をよく確認しましょう。

算定期間

算定期間は毎年8月1日~7月31日です。

申請期限

申請期間は基準日である7月31日の翌日から2年間です。

対象外の費用

【医療費の場合】

  • 高度先進医療費
  • 差額ベッド代
  • 入院中の食事代
  • 予防接種
  • 自由診療(人間ドック、美容整形手術、脱毛)
  • お産  など

【介護サービス費の場合】

  • 福祉用具購入費(ポータブルトイレや入浴補助用品など)
  • 住宅改修費(手すりの設置、段差の解消など)
  • 施設入所における食費や居住費(滞在費)、差額ベッド代、日常生活費
  • 介護保険の利用限度額を超えた全額自己負担の費用  など

支給額が500円以下の場合は支給されない

自己負担限度額を超えた金額が500円以下の場合は支給対象外となります。超過金額が501円以上の場合に支給されます。

同一世帯の判断

合算できるのは医療保険上の世帯に限られます。したがって、住民基本台帳に記載されている世帯とは異なります。例えば、国民健康保険の加入者と後期高齢者医療制度の加入者は、異なる世帯として扱われます。

医療保険・介護保険の両方を利用している場合のみ対象

医療保険と介護保険のどちらかの自己負担額が「0円」の場合は、支給対象外となります。

高額療養費、高額介護サービス費は差し引いて計算

医療保険の「高額療養費」と介護保険の「高額介護サービス費」による払い戻し額は、実際にかかった費用から差し引いて計算します。

最後に

高額医療と高額介護合算制度は、高額な医療費や介護費用を負担するための重要な制度です。これにより経済的な負担を軽減することができるため、忘れずに申請するようにしましょう。

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