水分のケア 認知症ケア

高齢者の脱水症は要注意!認知症にも影響する水分不足

2024年5月4日

こんなことはありませんか?

認知症でない高齢者

  • すぐに疲れる、体がだるい
  • 長距離を歩けない、ふらつく
  • 認知症でないのに、物忘れが多い

認知症の高齢者

  • ぼんやりしている、居眠りが多い
  • 落ち着きがない、イライラしている
  • 集中力がない、無関心


これらの状況が見られるときは、脱水症を起こしている可能性があります。
体内からわずかな水分が不足すると心身に影響が出てくるのです。

この記事でわかること

  • 体内の水分が不足することで起こる症状
  • 脱水が認知症の悪化を引き起こす理由
  • 元気で活力のある生活のために「すべきこと」がわかる

高齢者は1日に約2,400~2,800mlの水分が必要

若い人の体内に蓄積される水分量は体重の約60%ですが、高齢になると約50%に減少します。
そのため、高齢者は1日に体内から出入りする水分バランスを保つことが大変重要となります。

運動していなくても呼吸や皮膚からの蒸発で約700~1,000mlの水分が失われ、尿や便で約1,700~1,800mlの水分が排せつされています。
体内から失われる水分の合計は約2,400~2,800mlとなり、これと同じ量を摂取する必要があるのです。

どうやって水分を補給するのか

約2,400~2,800mlの水分を補給するとなると、「量が多くてとても無理!」と思われがちですが、すべてを飲み物で摂るわけではありません。
体内に補給する水分は、代謝水(体内で代謝によって生成される水分)200~300ml、食事から700~1,000ml、飲水から1,500mlと、3つに分けて取り入れることになります。

食事から摂る水分はみそ汁やスープ類も含まれ、普段の食事からも多くの水分を取り入れていることがわかります。

飲み物としては1日に約1,500ml摂る必要があります。ただし、高齢になるとトイレの心配から水分を控えたり、喉の渇きを感じにくくなることから、水分不足に気づかないことがあります。
さらに認知症を発症している場合は、自己管理が難しくなることから、脱水症を起こしやすくなります。

体内の水分が減少すると、どうなる?

高齢者は脱水状態になると、さまざまな症状が現れます。

体内から1~10%の水分が減少するとどうなるか、段階的に説明していきましょう。

1~2%の水分が減少して起こること

高齢者の体内は約50%が水分となるので、体重50㎏の場合は25kgが水分となり、容量に換算すると25,000mlになります。
この25,000mlの1~2%、つまり250~500mlが体内から減少すると、体はだるさを感じ始めます。また、脳への血流が悪化することから「ぼんやり」した状態になります。

1~2%の脱水

  • 疲労感が強まる(体がだるい)
  • うとうと、ぼんやりとしてくる
  • 集中力や注意力が低下する
  • 怒りっぽい、イライラすることが増える

認知症の人は落ち着きを失い、不穏な状態となっていきます。急に怒り出したり、イライラすることで周囲を困惑させる行動が目立ってきます。

2~3%の水分が減少して起こること

体内から2~3%(体重50㎏の場合は500~750ml)の水分が減少すると体温が高くなっていきます。
人間は常に熱を体外に捨てて体温を調整する必要があります。そのために不感蒸泄といって皮膚や呼吸から「水分を蒸発」しているのです。
体の水分が欠乏してくると、不感蒸泄に利用する水分が不足し、熱が捨てきれずに体温が上昇するのです。

2~3%の脱水

  • 体温が上昇してくる
  • 血液が濃縮されドロドロになる
  • 循環器に影響し、脳梗塞などのリスクが高まる

認知症であれば理解や判断力が低下して、混乱状態が増してきます。周囲に対しても強い拒否を示したり、激しい言動がみられるかもしれません。

5%の水分が減少して起こること

体内から5%(体重50kgの場合は1,250ml)の水分が減少すると運動機能が低下します。
ふらふらしたり、短い距離も歩けなくなり、転倒のリスクも高まります。


介護が必要な高齢者であれば、体を支えるような介護が増えていくでしょう。

5%の脱水

  • 幻覚、幻聴が現れる
  • 意識が混濁してくる

認知症であれば、興奮を伴った「せん妄」状態となります。
理性が失われ、抵抗が強まることで水分補給も困難になってきます。
脱水症状がさらに進み、さらに「せん妄」を悪化させる悪循環に陥ります。

10%の水分が減少して起こること

体内から10%(体重50㎏の場合は2,500ml)の水分が減少すると、臓器の機能が停止して死に至ります。
夏の猛暑で熱中症になり亡くなるのは、10%の脱水が原因です。
熱中症は最初に意識障害が起こるので、自分で異変に気づくことができず、助けを求めることもできないため死に至りやすいのです。

10%の脱水

  • 死に至る

軽度の脱水でも危険

脱水は軽度でも下記のような症状が見られます。

  • 尿意が鈍くなる
  • 失禁が増える
  • 元気がなくなり、活動性が低下する
  • 食欲が低下する
  • 唾液の分泌が減ることで、むせやすくなる

まとめ

軽度な脱水症でも防いでいくことはとても重要です。特に認知症の不穏な状態は、水分不足によって引き起こされるケースが多々あります。

「1日を通して水分補給を続けること」が心身を良い状態に保つ秘訣となります。
3度の食事以外に、飲料として1日1,500mlを欠かさずに取るようにしましょう。

こちらの記事もチェック!

-水分のケア, 認知症ケア
-, , ,