認知症の周辺症状は3つのタイプに分けられます。
①葛藤型:状況に対して強く反応する
興奮、暴言、暴力、徘徊、収集癖、異食
②遊離型:無反応、無関心
無感動、無為、無動
③回帰型:過去への回帰
昔の良かった時代へ戻る
今回は③の回帰型について、原因と対処方法についてお伝えします。
※周辺症状とは
BPSD、行動・心理症状ともよばれ、不安な・うつ・不眠・幻覚・妄想などの心理症状や、徘徊、焦燥、攻撃性、介護への抵抗や拒否、異食などの行動的症状を指します。
この記事でわかること
- 「回帰型」の原因がわかる
- 「回帰型」の対処法がわかる
- 4つの基本ケアも同時に行うと効果的
周辺症状の「回帰型」とは
回帰型は妄想の一部となりますが、過去の自分が一番輝いていた時代に戻る特徴があります。 認知力が落ちているため、現実世界に混乱や不安を感じ、何かしらのきっかけで過去へ戻ってしまいます。
自分が一番輝いていた時代に回帰する
ある方は、20代の頃に短い間だけ女優として働いていました。その時代が自分の中でとても幸せで、一番輝いたのでしょう。電話のベルが鳴ったり、通院や家族が出かけようとすると、「ポスター撮影ね」と言って服を選び、着替えて外へ行こうとします。
また別の人は小学校の教師で、毎朝決まった時間に手元の荷物をまとめ「学校に行く」といって出かけようとします。
回帰型のケアは「過去へ一緒に戻る」こと
先ほどの教師の例では、介護者が「今日は日曜日で学校はお休みですよ」と声を掛けたり、時には一緒に出掛けていくなど、過去の行動に付き合います。
「学校が休み」と聞き、「そうだったか」と納得して家に留まることもあれば、一緒に出掛けて家の周囲を一回りして家に戻ることもあります。家に戻ると、そのあとは落ち着いて過ごせていました。
このような行動に何度か付き合ったのち、過去へ戻る症状は消失しました。
回帰型は誰かが過去に付き合うことで、混乱や不安に満ちた現実に安心感を見いだし、戻って来られるようになります。
回帰型は幸せな時代がないと出現しない?
回帰型の人は幸せな時代に戻っているので、そこから現実に戻すことが果たして良いことなのか悩んでしまう一面もあります。しかし、過去は過去でどうしても現実との矛盾も生まれてしまいます。現実世界もそう悪くないと思ってもらい、症状が消失していくのが望ましいでしょう。
さらに回帰型は、幸せで自分が輝いていた時代がないと出現しない症状と言われています。
生活歴から過去を探る
回帰型は生活歴を探ることで、どのような時期に戻っているのかが把握しやすくなります。
回帰型に限らず、認知症ケアでは生活歴から人となりを知ることで、生来の性質や人間性を理解することができます。
過去を知ることで、傍から見れば異常と思える行動を自分に置き換え、「私もこの人だったら同じ行動を取るかもしれない」と思えるようになっていきます。
ただし、家族介護の場合は生活歴に自分も関わっていることから、客観的になれない場合もあります。気持ちに余裕がない場合は、介護保険サービスなどを活用して距離を取り、ケアはプロに任せましょう。
4つの基本ケアも同時に行う
回帰型は食事や水分を問題なく摂れる方が多いため、同時に4つの基本ケアも行っていきます。
- 1日1,500ml以上の水分摂取
- 1日1,500lcalの食事
- 便秘であれば解消(自然排便)
- 1日2km程度のウォーキング、あるいは30分程度の運動
水分不足や便秘を起こすと、回帰型と同時に葛藤型の症状が出てきてしまうこともあります。
そのような状況にならないように、4つの基本ケアは欠かさず行っていきましょう。
まとめ
認知症の周辺症状3つのタイプから、回帰型の原因や対処方法をお伝えしました。
回帰型は現実世界に不安や混乱を感じ、底から逃れるために自分の一番輝いて充実していた過去に戻っています。
その過去に一緒に付き合いつつ、「現実もそう悪くないよ」と思ってもらえるようにケアしていきましょう。