在宅介護が始まると、わからないことが多くて不安や心配に振り回されることがあるかもしれません。先の見えない介護に対して、答えを求めてインターネットで検索する方も多いでしょうが、不安はなかなか解消されません。
今回は、介護初心者が感じやすい不安の正体とその対処法について、5つのポイント・方法に分けて解説します。
この記事でわかること
- 介護初心者が感じる不安の原因がわかる
- 不安を安心に変える方法を知る
- 介護の相談先がわかる
介護者が感じるの不安の正体
世の中には介護に対するネガティブな情報があふれています。
認知症介護の大変さや介護者の社会的孤立、家族関係の悪化など、これらの情報を知ると必要以上に不安や心配を感じるかもしれません。
この不安や心配の正体は何なのか、5つのポイントに分けて確認してみましょう。
不安ポイント1:家族は介護初心者
ここで押さえておきたいのは「家族は介護の素人」であるということ。
親に介護が必要になったとき、支える家族には介護の経験がない方がほとんどです。介護についての知識も技術もない中で、ネガティブな情報だけが入ってくれば、不安や心配が大きくなるのは当然のことです。
不安ポイント2:介護保険制度が複雑すぎる
介護者を悩ませるのは、介護保険制度が複雑で難しすぎることです。介護が必要な状態になる前に、予防的に介護保険サービスを利用するのが理想ですが、そのような情報は自ら取りにいかないと手に入りません。介護について知る機会は少なく、ほとんどの方が情報ゼロから介護をスタートさせています。
さらに、基本的に利用する介護サービスの選択権は利用者にありますが、種類が多い上に利用対象者やサービス内容が細かく定められており、簡単に理解はできません。
介護保険制度の難しさも、介護の不安の1つになります。
不安ポイント3:マッチした答えが見つからない
書店に行けば恐怖を煽るようなタイトルで、介護を特集する雑誌が並んでいます。インターネットで検索すれば溢れる情報から自分の答えを探すのに時間を要し、ネガティブな記事も多いので安心を得ることはなかなかできません。
介護は受ける側の病気や家族構成、生活環境や経済状況などが全く違います。介護者自身が仕事をしているのか、子育て中か、高齢なのか若いのかで、それぞれの背景も変わってきます。
それらの違いにマッチした介護のアドバイスや答えは、書籍からもインターネットからも情報は溢れているのに得ることは難しいのです。
不安ポイント4:どう対処すればいいのかわからない
人は対処法がわからないことについては、不安を感じるようになります。
仕事をしながら介護ができるのか、育児と介護が重なったらどうすればいいのか、高校生や大学生あるいは社会人なりたてで介護を抱えたらどうするのか、「今、どうすればいいのか」「明日、どうすればいいのか」を考えたり悩んだりする余裕がなくなるほど、対処法がわからない不安は大きくなります。
不安ポイント5:家族だから気持ちの折り合いがつかない
家族はどうしても遠慮がなくなります。それが家族の良さでもあり、だからこそ困ることでもあります。
素直に話す、気持ちを伝える、相手を不快にさせないような言葉を選ぶなど、これらのことが常に心地よくやり取りできれば理想的です。しかし、家族になると、思ったことをストレートに言ったり、感情的になったり、気分次第で「嫌だ」と言ったり、お互いに配慮のない対応になることもあるかもしれません。
さらに、介護のことになると家族の立場が逆転することも少なくありません。
親は威厳があり、尊敬され、一目置かれる存在だったのが、介護になると関係が逆転し、子どもが親に対して説得したり、行動の制限や批判、責める場面が出てくるかもしれません。
親と子の関係が変わることについてお互い悩み、葛藤が生じるのも不安の要素になっていきます。
不安を安心に変える家族介護とは
不安な要素の多い介護に対して、どうしていけばよいのでしょうか。
不安を安心に変えていく5つの方法をご紹介します。
不安を安心に変える方法1:地域包括支援センターを一番に頼る
介護が始まったら、または始まる前に不安や心配を感じたら、地域包括支援センターに相談しましょう。
地域包括支援センターは地域に密着した総合相談窓口で、高齢者の健康面や生活全般について相談を受けています。どの地域にも管轄の地域包括支援センターがあり、保健師・社会福祉士・ケアマネジャー(介護支援専門員)などの専門職が配置されています。
介護だけではなく、高齢者に関わることであれば何でも相談できる窓口です。
介護について一番最初に相談できる場所が地域包括支援センターであることを知っておきましょう。
不安を安心に変える方法2:介護保険サービスを利用する
地域包括支援センターは介護サービスについても案内しており、制度の説明や手続きを行うことができます。積極的に介護サービスを活用し、介護のプロとつながっていきましょう。特にケアマネジャーは個別にヒアリングを行った上でケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、サービスが問題なく提供されているかをモニタリングし、毎月の家庭訪問で介護を受ける本人に新たな問題が生じていないかを確認します。
個別に的確なアドバイスや支援を行うのがケアマネジャーなので、不安や心配は遠慮なく相談していきましょう。
不安を安心に変える方法3:必要な情報や人を取捨選択する
介護は初期の頃が一番不安で、親や自分自身の生活が安定せず、介護保険の申請・その他諸々の手続きなどで大変な時期になります。その時期の介護者は肉体的にも精神的にも疲れ、ちょっとした刺激やストレスに弱くなってしまうことがあります。
その時期に不安を強めるような情報やアドバイスからは距離を置くことをおすすめします。例えば、親戚からの非難を込めた口出しや、近隣の過剰な干渉、雑誌やインターネットからのネガティブな情報などはできるだけ遠ざけ、不安を解決する正しい情報を提供してくれる人は誰なのかを見極めていきましょう。
不安を安心に変える方法4:親の意向を確認しておく
できれば介護が始まる前に、親と将来についてコミュニケーションを取っておくと良いでしょう。どんな介護を受けたいのかを聞ければいいのですが、具体的な話になると親としては想像したくないですし、避けたい話題になっていきます。
介護についてはストレートに聞くのではなく、少しずつ、時間を掛けて聞くことが望ましいです。
介護が必要になったら家で過ごしたいのか、施設に入所したいのか、趣味や現在の病気のこと、可能であれば貯蓄や資産の状況など多くの情報を得ておくと、実際に介護が始まってからの悩みや不安も軽減していきます。
不安を安心に変える方法5:介護は親を傷つける場面があると知っておく
介護が必要になるということは、できないことが増えていくことにもなります。
介護者自身と同様に、介護を受ける親も不安だということを理解しておきましょう。
認知症になると場所や時間と自分とのつながりが不確かなものとなり、恐怖を感じることもあります。脳梗塞の後遺症でうまく話せなくなる、体に麻痺が残り身の回りのことに介助が必要になる、そんな自分に焦りや絶望を感じているかもしれません。
家族だから遠慮のない伝え方ができる良さもありますが、ときには親を簡単に傷つけてしまうかもしれないことを理解しておきましょう。
まとめ
不安を安心に変えるためには、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの介護のプロを頼ることが重要です。正確な情報やアドバイスを受けることで介護に対する不安を軽減し、落ち着いた生活を維持するための介護体制を確立できます。
安心して生活を継続するための環境を整え、困ったことがあれば一人で抱え込まずに、まずは相談してみることが大切です。