ケアマネジャーは要介護(要支援)認定を受けた方に介護相談や支援サービスを提供する介護保険のスペシャリストです。
ケアマネジャーに支援を依頼すると、介護を受ける方(以下、利用者)の自宅まで訪問してくれ、病歴や生活状況、家族構成、介護で何に困っているかなどを聞き取ります。
家庭内の事情や、他人にあまり知られたくないことを話す相手となるので、お互いの信頼関係はとても重要です。
ケアマネジャーとして10年以上、多くの家庭を支援してきた筆者が、ケアマネジャーを決めるポイントや信頼関係の構築方法、トラブルが生じたときの対処法も含めてお伝えしていきます。
この記事でわかること
- ケアマネジャーを決めるポイント
- ケアマネジャーと信頼関係を構築するコツ
- トラブルが生じたときの解決方法
ケアマネジャーは利用者・家族と介護サービス事業所をつなぐ調整役
ケアマネジャーは正式名称「介護支援専門員」といい、利用者が適切な介護保険サービスを受けられるように、どのような目的でサービスを利用するのかを記載した「ケアプラン(介護サービス計画)」を作成します。
さらに、利用する介護サービス事業所と連携し、ケアプランに記載された目標を達成できるように調整していきます。
利用者や家族の困りごと、体調の変化などの情報交換も介護サービス事業所と常に行うため、病気の急変時や転倒事故などがあった場合は迅速に対応できます。
ケアマネジャーの連携は介護サービス事業所だけでなく、自治体や地域包括支援センター、病院、ボランティア、民生委員など多岐にわたります。
ケアマネジャーの業務
主な業務は次の通りです。
- 利用者・家族からの相談窓口
- 課題把握と解決策の提案
- 介護サービス事業所との情報共有、連絡・調整
- ケアプラン(介護サービス計画書)作成
- 定期的なモニタリング
- 定期的+必要に応じて行う家庭訪問
継続して介護サービスを利用する中で、新たな課題が生じていないか、サービス提供に問題はないかなどをチェックし、必要があればサービス内容の見直しを行います。
ケアマネジャーを選ぶポイント
ケアマネージャーは基本的に真摯(しんし)で熱心な人が多く、利用者や家族の力になりたいと思いながら働いています。しかし、前職の経験や保有資格により得意分野が異なり、対人能力にも個別差があります。利用者や家族が望む人柄もそれぞれなので、ケアマネージャーを選ぶ際のポイントをまとめました。
ポイント1:保有資格
ケアマネジャーの資格を受験できる条件は、介護福祉士、社会福祉士、医師、看護師、理学療法士などの国家資格を保有し、保険・医療・介護の分野で5年以上の実務経験がある人に限ります。
それぞれの資格を生かして実務経験を重ねた上でケアマネジャーの資格を取得しているため、前職種により得意分野が異なる場合があります。
Memo
前職が看護師であれば医療系に強く、介護福祉士であれば介護について詳しいかもしれませんが、ケアマネジャーの一番大切な能力はケアマネジメント力です。
介護福祉士で医療について知識が不足していても、医療系の専門職に聞いて情報を集め、ケアマネジメントに生かせるかどうかが重要となります。
前職の保有資格はケアマネジャーを選ぶ際の判断材料になりますが、それだけではないと知っておきましょう。
※ケアマネジメントとは、介護や支援を必要とする方やその家族に対して、相談・調整を行い、効果的な介護サービスを提供するプロセスまたはシステムのことです。
ポイント2:経験年数
経験年数が長いケアマネジャーは、それだけ多くの支援件数をこなしています。介護保険制度への理解も深く、地域の情報やサービス事業所とのつながりも強いため、サポート力があるでしょう。
Memo
新人ケアマネジャーであっても、在籍している居宅介護支援事業所に経験歴の長いケアマネジャーがいれば安心です。ケアマネジャーは単独で利用者を支援するのではなく、事業所内で情報交換しながら一人で抱えないような体制を取っています。
ポイント3:丁寧に説明してくれるか
介護保険制度は複雑で、利用者や家族からすれば分からないことだらけです。介護についても初めてのことであれば、疑問点も多くあるでしょう。
それらを質問した際に納得できるまで、分かるまで説明してくれるかどうかで、信頼できるケアマネジャーなのか判断できます。
※その場でわからなくても、後日になって調べて説明してくれるかどうかも大切です。
ポイント4:親身になってくれるか
利用者や家族の話を十分に聞いてくれるか、丁寧にアドバイスしてくれるかも、ケアマネジャー選びにおいて重要なポイントです。
話を聞いてくれない、否定ばかりされる、返答がはっきりしないなど、長期間依頼していくには難しいと感じた場合は、ケアマネジャーの変更も検討したほうがよいかもしれません。
Memo
ケアマネジャーの変更は可能ですか?
信頼できない、連絡がなかなか取れない、要望を理解してくれないなどの理由で不満や、何かしらのトラブルで信頼できないと判断した場合は、我慢せずにケアマネジャーの変更を検討しましょう。
ケアマネジャーの変更方法
- 担当ケアマネジャー本人、または居宅介護支援事業所の責任者に相談して変更してもらう。
- 別の居宅介護支援事業所に変更の相談をする。
- 地域包括支援センターや自治体の窓口で、ケアマネジャーを変更したいと相談する。
ポイント5:情報を調べる能力があるか
介護や看護・医療に関する知識が豊富であることはもちろん必要ですが、それ以前に調べる能力があるかも大切になります。
水分・栄養・排便・運動などのケア知識や、疾患の特徴、薬の効果、傷の処置など、分からないことを「調べる」あるいは「聞く」ことで情報を集めて在宅介護に生かすことができるかが重要です。
ポイント6:納得できるケアプランか
ケアマネジャーが作成するケアプランに納得できるかどうかです。
利用者や家族の要望を反映させるのはもちろんですが、専門的な視点で課題を把握し、適切な介護サービスを位置づけられているかを確認しましょう。
納得できないようであればケアマネジャーに疑問点や根拠を聞くようにしてください。
ポイント7:対応が適切で迅速かどうか
緊急時や問題が発生したときに、迅速な対応をしてくれるかどうかです。訪問が必要なのに電話で済ませようとしたり、折り返しの電話がないなど、利用者や家族を不安にさせるようなケアマネジャーですと、信頼関係が構築できません。
Memo
利用者の自宅からケアマネジャーの事業所が近い方が、すぐに駆けつけやすくなります。
ケアマネジャーを選ぶ際は、自宅からなるべく近い居宅介護支援事業所を選ぶのも一つの方法です。
ケアマネジャーとは、こう付き合う
ケアマネジャーが決まった後、良好な関係を構築できるように、利用者や家族が注意すべき点があります。
要望は具体的に伝える
「言わなくても伝わるだろう」「なんとなくわかってくれるだろう」と思わないことです。利用者や家族の要望は具体的にはっきりと伝え、理解してもらう努力をしましょう。
不安なこと、心配に思っていること、困っていることなどを含めた現状や、利用したいサービス、希望する生活などを明確に伝えます。
働いていたり、子育て真っ最中であれば、当然できる介護の時間や手間は狭まってきます。家族ができる介護はどこまでかを、しっかりと伝えましょう。
不明点は遠慮なく質問する
不明なこと、わからないことがあれば、その場ですぐに質問しましょう。ケアマネジャーは聞かれないと理解しているものだと思い、話を進めてしまいます。
何事も内容を理解していると、具体的な要望も伝えやすくなり、解決への近道にもなります。
連絡や報告をまめに行う
病院の診察で飲み薬が変わった。最近食事量が少ない。認知症の症状が悪化しているなど、日頃の変化で気になることがあれば、ケアマネジャーに連絡して伝えましょう。
もしかしたら介護サービスを見直す必要があるかもしれず、早めに手を打つことで回復する可能性も高まります。
遠距離介護の場合は近況を把握するために、電話連絡を密に行うと良いでしょう。
信頼関係はお互いに努力も必要
利用者や家族、ケアマネジャー共に良い信頼関係を構築できるように、歩み寄りは常に必要となります。
家族介護がうまくいかない時期はストレスを抱えやすくなり、「ケアマネジャーが何もしてくれない」と一方的に思い込んでしまうこともあります。
そんなときこそ、思っていることを言葉にして率直に伝えましょう。ケアマネジャーとしては課題が見えやすくなり、解決策につながる場合も多くあります。
まとめ
ケアマネジャーの選び方、付き合い方をお伝えしていきました。
介護は思うようにならないことが多く、場合によっては辛い日が続いてしまうかもしれません。
そんな場合は早めにケアマネジャーへSOSを伝え、適切な介護保険サービスを導入するなど、対策を打ち出していきましょう。
介護の悩みを「こんなささいなこと…」と思わず、まずは言葉にしてケアマネジャーへ相談してみてください。