訪問介護とは、ホームヘルパー(訪問介護員)が介護を必要とする高齢者の自宅を訪問し、日常生活のサポートや身体的な介助を行うサービスです。具体的には、調理、掃除、洗濯などの「生活援助」や、入浴、排せつ、食事の介助などの「身体介護」が含まれます。
要支援・要介護の認定を受けた方、あるいは自治体が必要と判断した方が、できる限り自立した生活を過ごすための生活をサポートします。
今回の記事では訪問介護のサービス内容や費用とともに、ホームヘルパーに対する疑問や付き合い方を解説します。
この記事でわかること
- 訪問介護のサービス内容や費用
- 訪問介護で行えないサービス
- ホームヘルパーの特徴
訪問介護サービスを利用するまでの流れ
訪問介護は在宅で生活しており、要介護認定を受けている方が利用対象者となります。
要支援1・2の認定を受けている方は「介護予防訪問介護」となり、要介護状態を予防する目的でサービスを利用することができます。要支援1の場合は週2回まで、要支援2の方は週3回までと、利用制限があります。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、介護サービスを直接提供していない施設も「自宅」と位置付けられ、訪問介護を利用することができます。特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護付き有料老人ホームなどに入居している方は、施設で介護サービスを受けられるので対象外となります。
訪問介護サービスを受けるには要介護認定申請から
訪問介護を利用するには、下記の手順で手続きをしていく必要があります。
- 要介護認定の申請:市区町村の窓口で要介護認定を申請します。
- 認定調査:調査員が自宅を訪問し、心身の状態を確認します。
- 要介護認定の決定:調査結果に基づき、要介護度が決定されます。
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)の選定:ケアマネジャーを選び、ケアプランを作成します。
- 訪問介護事業所の選定と契約:ケアプランを作成、訪問介護事業所を選定し契約します。
- 訪問介護サービスの利用開始
Memo
ケアプランとは、介護保険サービスを利用するための計画書です。利用者の課題や目標、必要なサービス内容をまとめたものです。
訪問介護で受けられるサービス
訪問介護のサービス内容は「身体介護」と「生活援助」に分かれています。
体に直接触れて行う:身体介護サービス
身体介護は日常生活の基本的な身体的支援を提供するサービスです。
身体介護サービスの具体例
- 入浴介助:全身浴、部分浴、洗髪、身体の洗浄など
- 排泄介助:排泄の介助、おむつ交換
- 食事介助:食事の準備、摂食介助
- 清拭:身体を拭いて清潔にすること
- 整容:口腔ケア、洗顔、髭の手入れなど
- 更衣介助:着替えの準備、衣服の着脱
- 体位変換:褥瘡(床ずれ)を防止するための寝返りの介助移乗介助: ベッドや椅子、車いすへの移乗
- 移動・歩行介助:車いすや自立の状態での動作・移動介助
- 外出介助:日常的に必要な買い物への介助
爪切りは皮膚に化膿や炎症が見られず、糖尿病でない場合に行えます。
また、ホームヘルパーが研修を受けるなど一定の条件を満たした場合は、「痰の吸引(口腔内・鼻腔(びこう)内・気管カニューレ)」や「経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)」を行うことが可能です。
日常的な家事を行う:家事援助サービス
生活援助サービスとは、日常生活の家事や買い物などを支援するサービスです。
生活援助サービスの具体例
- 掃除:居室、トイレ、浴室などの掃除、ゴミ出し
- 洗濯:洗濯機や手洗いによる洗濯、洗濯物の干し、取り込み、収納
- ベッドメイク:シーツや布団カバーの交換
- 衣類の整理・補修:衣類の整理、季節ごとの入れ替え、ボタン付けや破れの補修
- 調理:利用者本人のための調理、配膳、後片付け
- 買い物・薬の受け取り:近隣店舗での食材や日用品の買い物、薬の受け取り
- 公共料金の支払い:公共料金の支払い代行
介護保険サービスは基本的に自立支援を目的としているので、利用者ができることについては、特別な事情がない限りは行うことができません。さらに、利用者が自立するためにホームヘルパーと一緒に家事を行う場合は、身体介護サービスとなる場合もあります。
Memo
身体介護・生活援助以外に「通院等乗降介助」を提供している事業所もあります。通院乗降介助とは、要介護者が病院や診療所などに通院する際に、訪問介護員が車で送迎し、乗り降りや移乗、受診手続きのサポートなどの介助を行うサービスです。
訪問介護の利用料金
訪問介護の利用料金は以下のようになります。
介護保険サービスを利用した場合の支払い費用(自己負担分)は1~3割となり、所得に応じて決まっています。
訪問介護には受けられないサービスがある
訪問介護のホームヘルパーには、介護保険法により提供できるサービス内容が決まっており、引き受けたくても「断らなければならない」ことがあります。
以下のような内容はサービス提供できません。
- 日常生活の範囲を超えたサービス:庭の手入れ、大掃除、ペットの世話など。
- 本人以外の援助:家族のための調理や洗濯、来客への対応など。
- 本人ができることの援助:本人が自分でできることは基本的に援助対象外です。
- 医療行為:注射や点滴などの医療行為は行えません。
介護保険サービスを提供している事業所によっては、受けられないサービスに自費料金を追加することで、提供できる場合があります。
ホームヘルパーとはどんな人?
ホームヘルパーは介護福祉士の資格保持、もしくは介護職員初任者研修または実務者研修修了者が訪問介護事業所で業務を行うことができます。2018年に新設された生活援助従事者研修の資格でも、生活援助中心の支援であれば従事できることになりました。
ホームヘルパーの平均年齢
2022年の介護労働実態調査によると、介護労働者全体の平均年齢は50.5歳で、ホームヘルパーが54.7歳となっています。
訪問介護サービスを受ける高齢者にとって、20代などの若手ヘルパーであれば活力をもらえますし、60代を過ぎた年配のヘルパーであれば、それなりに人生経験があり、年齢が近いこともあって安心感につながります。
また、年齢に関係なくホームヘルパーとして長年経験を積み上げていれば、技術や知識が深いことから重度者にとって頼りになる存在となります。
コミュニケーション能力が高い
ホームヘルパーは、介護が必要な高齢者のニーズや希望を理解し、それに応じたサービスを提供するため、信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が非常に重要となります。
訪問介護を受ける高齢者は「家」という環境から心を開きやすく、自分自身の不安や悩みを打ち明けやすくなります。場合によっては深い気持ちのやり取りが生じるため、ホームヘルパーは優れたコミュニケーション能力や共感力を持つ者が多く、心のケアや寄り添うという意味では欠かせない存在となっています。
Memo
ただし、訪問介護は自宅の中に介入し、人と人が密に関わり会うことになるので、あまりにも価値観が違う、性格の不一致、傷つくことを言われた、などがあれば、訪問介護事業所にヘルパーの交代を相談しましょう。
家族介護者を支える一面もある
介護に携わる家族へのアドバイスや励まし、時には愚痴聞きなどをホームヘルパーが行い、不安の解消やストレスの緩和などにも協力していきます。虐待やヤングケアラーの早期発見、深刻な家族の問題があれば責任者へ報告するなどの役割も担っています。
介護技術に優れている人が多い
訪問介護はホームヘルパーが一人で訪問し、ケアを行います。その場で困ったことがあっても、基本的には一人で解決して業務を遂行しなければなりません。
介護施設であれば居室の広さやベッドなどの配置が整っていますが、在宅介護ではそうもいきません。家庭によってベッドや手すりの位置が違い、廊下やトイレも狭く、浴室の構造もバラバラです。さらに利用者によって大柄な体格や拘縮・麻痺があることもあり、個別のケア技術が求められます。
訪問介護のホームヘルパーはそれらのことに柔軟に対応できる訓練を受けており、さまざまな環境に適応してケアを行います。介護技術の基礎や応用をしっかりと身につけ、時間内に必要な業務が終わるように立ち振る舞い、介護を要する方が発した言葉に注意深く耳を傾け、専門性を発揮したケアを提供します。
まとめ
訪問介護サービスは、高齢者が自宅で安心して暮らし続けるために欠かせないサービスです。在宅介護の要と言っても過言ではなく、高齢者が増え続ける世の中において、重要な役割を担っています。
訪問介護の利用手順や費用、提供されるサービス内容を理解し、訪問介護を上手に活用していきましょう。