家族に介護が必要になったとき、デイサービスの利用を考えることがあるでしょう。デイサービスは日中に介護を受けられるため、家族の負担を大きく軽減できるサービスです。そのため、介護保険サービスの中でも利用率が高く、人気があります。ただし、利用する高齢者(以下、利用者)に合わない施設を選んでしまうと、かえって自立を妨げてしまうこともあるので、慎重に選ぶことが大切です。
この記事では、デイサービス選びに役立つ5つのポイントをご紹介します。特にポイント5の「デイサービスのデジタル化」は重要な視点ですので、ぜひ参考にしてください。
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デイサービスとは、介護が必要な高齢者が日中に利用する介護サービスです。利用者はデイサービスからの送迎で施設に通い、日常生活の支援やリハビリテーション、レクリエーション活動などを受けることができます。これにより、利用者の生活の質を向上させるとともに、家族の介護負担を軽減することができます。
ポイント1:ニーズを確認する
まず、利用者がどのようなサポートを必要としているのか、要望を明確にしましょう。身体機能の向上が必要なのか、日常生活の支援が必要なのか、さまざまなニーズを整理することで、どのようなデイサービスが適しているかが見えてきます。
1. 体の機能改善・向上
利用者が身体機能の維持や向上を目指す際、デイサービスで提供されるリハビリや機能訓練は非常に重要です。以下を参考に、介護を要する家族のニーズを考えてみましょう。
- 入院中にリハビリを行い、改善した身体機能を維持(さらに向上)したい。
- 脚の力が弱ってきたので、強くしたい
- 体力が落ちたので、向上させたい
体のどこが弱くなったのか、何を改善したいのかを明確にしておくことが大切です。デイサービスによってリハビリや機能訓練の内容に違いがあるため、選ぶ際の基準としてしっかりと把握しておきましょう。
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リハビリと機能訓練には違いがあります。リハビリテーションは、医師の診察や処方に基づく訓練・治療であり、主治医の指示のもとに理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)が行います。一方、デイサービスでは、機能訓練指導員(施設職員で有資格者)が日常生活支援を中心に訓練計画を作成し、利用者のニーズに合わせた訓練を実施します。
2. 日常生活で必要な支援
日常生活で必要な支援や介護を見極め、困りごとがデイサービスで解決できるかを確認することも、重要な選択要素となります。
- 自宅の浴槽に入ることができない
- 食事の準備や食事中のサポートが必要
- 排せつに問題がある
- 家族が仕事で不在になる時間が不安
- 認知症の症状が落ち着かず、目を離せない
デイサービスを利用すれば、入浴や栄養に配慮した食事を摂ることができます。また、5~6時間以上のサービスを提供する施設もあり、介護者にとってはレスパイト(介護を休む時間)として利用することが可能です。介護を必要とする高齢者と介護者の視点から困りごとを整理しておきましょう。
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デイサービスは日常生活の自立を支援する場でもあり、さまざまな理由でできなくなったことを再びできるようにサポートします。例えば、家の浴槽を跨ぐことが難しく入浴ができない場合、デイサービスで訓練を重ねることで、入浴できるようにします。
3. 趣味や意向
高齢者の生活の質を向上させるためには、楽しみや社会的交流が重要です。囲碁、将棋、カラオケ、調理など、介護を必要とする高齢者の趣味や得意なこと、あるいは意向を知っておくだけでも、デイサービス選びに役立ちます。例えば、以下のような例が考えられます。
- 趣味活動や社会的交流を楽しみたい
- 外出やイベントに参加したい
- 手先を使ったモノづくりや料理をしたい
- 少人数で静かな場所がいい、あるいは賑やかな方がいい
デイサービスでは、利用者の興味や趣味に合わせたレクリエーション活動を提供しています。この多様なアクティビティが、大きな魅力となっています。
「体の機能改善・向上」「日常生活で必要な支援」「趣味や意向」
これらのニーズを事前に少しでもまとめておくと、デイサービス選びに優先順位をつけることができます。
ポイント2:施設に通うサービスの種類
デイサービスの正式名称は「通所介護」であり、同じように施設に通って受けられる介護保険サービスには複数の種類があります。それぞれの目的が異なるため、各サービスの内容を理解し、ニーズに合った適切なサービスを選びましょう。
施設に通うサービスは5種類
- 通所介護(デイサービス)
施設の数も利用者も多いサービスです。日常生活の支援や機能訓練、レクリエーションなどを提供しています。また、介護予防通所介護もこのカテゴリに含まれ、要支援者を対象とした介護予防のプログラムが提供されます。
- 通所リハビリテーション(デイケア)
老人保健施設や病院、診療所の通所リハビリテーション施設に通い、日常生活の支援や生活機能向上のための機能訓練、口腔機能向上サービスを受けることができます。これらのリハビリテーションは、理学療法士や作業療法士によって提供されます。
- 地域密着型通所介護
利用定員が18人以下の小規模なデイサービスです。原則として、施設と同じ市区町村に居住している方のみが利用できます。日常生活の支援や機能訓練、レクリエーションなどを提供しています。
- 認知症対応型通所介護
認知症の高齢者を対象とした利用定員12名以下のデイサービスで、専門的なケアを提供します。スタッフは認知症ケアの知識と技術を持っています。原則として、施設と同じ市区町村に居住している方のみが利用できます。
- 療養型通所介護(療養型デイサービス)
主に医療的なケアが必要な高齢者や、慢性的な病気を持つ方を対象としています。デイサービスの一種ですが、看護師や医療スタッフが常駐し、より医療に特化した支援が提供されます。
デイサービスをはじめ、通いのサービスを選ぶ際には、提供されるサービス時間にも違いがあるため、利用者や介護者の事情に合ったサービスを選ぶようにしましょう。
最近注目されているデイサービス
近年、新しいタイプのデイサービスが注目を集めています。特に、夜型デイサービスやリハビリ特化型デイサービスがその代表例です。以下にそれぞれの特徴を紹介します。
- 夜型デイサービス
通常の日中のデイサービスとは異なり、夜型デイサービスは夕方から夜間にかけてサービスを提供します。日中のデイサービスから続けて利用することも可能で、17時頃に施設に到着し、入浴や夕食、就寝の準備を終えて20時頃に帰宅するため、利用者は帰宅後すぐに寝られるという利点があります。これにより、仕事や子育てと介護を両立している家族にとって、忙しい夜の時間に余裕が生まれます。
- リハビリ特化型デイサービス
リハビリテーションに特化したデイサービスで、理学療法士や作業療法士がリハビリプログラムを提供してます。医療機関と連携していることが多く、専門的なリハビリを受けることができます。そのため、病院やクリニックのように専門的なリハビリを通じて身体機能の改善や維持を目指す方に適しており、日常生活での動作改善にも役立ちます。
これらの新しいタイプのデイサービスは、利用者の多様なニーズに対応し、より質の高いケアを提供することを目指しています。利用者の状態や生活スタイルに合ったサービスを選ぶことで、より充実した介護を受けることができるでしょう。
ポイント3:情報収集を行う
次に、地域のデイサービスについての情報を集めましょう。ケアマネジャーからパンフレットや案内をもらうことに加え、インターネットで複数の施設を比較するのも良い方法です。ホームページやSNSでの情報発信を確認することで、施設の雰囲気を把握することができます。
デイサービスの公式サイトを確認する
公式サイトでは、企業の方針やデイサービスの特徴、イベント情報などを確認することができます。また、写真やビデオを通じて施設の雰囲気を把握することも可能です。
SNSで従業員の年齢層が見えてくる?
若い人たちは、求人誌や新聞の求人広告よりも、インターネットの求人サイトやホームページをチェックして仕事を探します。特にSNSは、職場の雰囲気やセンスを感じ取れるため、就職先を決める際の重要なツールとなっています。そのため、SNSで積極的に情報を発信しているデイサービスには、若手が多く集まる傾向があります。
また、候補となっているデイサービスに通っている知り合いや近隣の方がいれば、本人や家族に評判を聞くのも良い方法です。
ポイント4:施設を見学してみる
候補となるデイサービスがあれば、見学を予約して実際に施設を訪問してみましょう。そこで、施設の雰囲気やスタッフの対応、設備の充実度などを直接確認することができます。見学の予約はケアマネジャーが手配してくれることが多いですが、家族が直接連絡して見学することも可能です。
見学の際に注目してほしい点
デイサービスを見学する際には、以下のポイントに注目すると良いでしょう。
【利用者の様子】
- 施設の清潔さや環境・設備:機能訓練機器などが充実しているか
- スタッフの対応と雰囲気:利用者に対するスタッフの対応や、スタッフ同士のコミュニケーションなど
- スケジュール内容:1日のスケジュールや年間の行事一覧などを確認する
- 食事と栄養:栄養に配慮したメニューか、アレルギー対応や特別食の対応が可能か
- 事務所の整理整頓:バックヤードも見れたら観察
デイサービスは外観を見るだけでも違いを確認することができます。大規模な施設は独立した建物の場合が多く、一方で少人数の小規模な施設はマンションやビルの1階、あるいは一戸建てを改築しているところもあります。親しみやすい雰囲気、高級感、活気など、外から見ただけでわかる情報も多いので、いくつかの施設を散歩がてら回ってみるのも良いでしょう。
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デイサービスは介護保険サービスのため、基本的な利用料は1~3割の負担となりますが、食事代やレクリエーションにかかる費用などは自費となります。見学時に可能であれば、料金の確認も行うと良いでしょう。
ポイント5:デジタル化をチェック
デイサービスの中には、デジタル技術を活用して、より効果的なサービスやケアを提供しているところもあります。以下に、デイサービスにおけるデジタル化の具体例と、それが介護者家族にもたらす利点をご紹介します。
電子カルテシステム
紙ベースのカルテを電子カルテに移行することで、情報の共有や管理が容易になります。これにより、スタッフ間の情報伝達が迅速かつ正確に行え、ケアの質が向上します。また、効果的なケアが見える化されることで、家族にとっても安心感が増します。
連絡帳のデジタル化
従来の紙の連絡帳をデジタル化することで、遠距離介護でも当日のうちにその日の様子を受け取ることができます。また、紙が増えるストレスからも解放されるでしょう。
請求書・領収書のデジタル化
利用料金の領収書をデジタル化し、電子メールや専用アプリで送付してもらうことで紙の管理が不要になります。これにより、利用者や家族が支払い履歴を簡単に確認でき、家計の管理が楽になります。
送迎車の現在位置把握
デジタルツールを使って送迎車の現在位置をリアルタイムで把握できるシステムが開発されています。家族はアプリを通じて送迎車の到着予定時間や現在の位置を確認できるため、安心して待つことができます。
デジタル化により、デイサービスの提供体制は大きく進化しています。利用者のニーズに応じた最新の技術を取り入れることで、より良いケアの実現が可能となります。これらは一例に過ぎませんが、他にもさまざまなデジタル技術が活用されています。例えば、電子契約や書類のやり取りも電子化されており、手続きの効率化が図られています。デイサービスを選ぶ際には、こうしたデジタル化の変化に対応しているかどうかを確認することも大切です。
まとめ
家族に介護が必要になった際、デイサービスの利用を検討することがあります。デイサービスは家族の負担を軽減し、高齢者の生活の質を向上させますが、効果を得るためには適切な施設を選ぶことが重要です。
この記事では、デイサービス選びの5つのポイントについて解説しました。特に、新しい取り組みに前向きでデジタル化にも対応している施設は、介護が必要な高齢者や家族に多くの利点をもたらしてます。
可能な限り情報を集め、見学を通じて最適なデイサービスを選びましょう。