高齢の家族に介護の心配が出てきたとき、どこに相談したらよいのでしょうか。
久しぶりに帰省したら、親の様子がおかしいと感じたとき、誰に頼ればよいのでしょうか。
この記事でわかること
- 地域包括支援センターの役割
- 地域包括支援センターで相談できること
- 地域包括支援センターの活用方法
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターは、高齢者の生活をサポートするための支援や相談ができる窓口です。
「介護の備え」という意味でも、地域包括支援センターの役割や相談方法を知っておくと、いざ介護がスタートした時の行動を起こしやすくなります。
地域包括センターができた背景
地域包括支援センターは、高齢化社会や少子化の進行に伴い、地域での支援体制の強化が求められていることから2005年に設置されました。地域住民の健康や生活の質を向上させるために、地域包括支援センターは重要な役割を果たしています。
人口2万~3万人に1カ所、または中学校区を目安に設置されており、設置主体は市区町村です。
地域包括支援センターの役割
地域包括支援センターは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者をサポートする「総合相談窓口」です。
地域に住む住民の健康維持と安定した生活が過ごせるよう援助を行い、包括的に支援することを目的としています。
主な役割は以下のとおり、4つあります。
- 介護予防ケアマネジメント
- 総合相談支援業務
- 権利擁護業務
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
- 介護予防マネジメント
介護が必要になる可能性が高い高齢者を対象に、体状態の悪化を防ぎ、自立した生活が続けられるように介護予防の観点から支援を行います。
健康を保持・増進できるように「身体機能の向上」「栄養改善」「口腔機能向上」「認知機能低下予防」「閉じこもり予防」などのために、介護予防サービスの利用を促していきます。
- 総合相談支援業務
地域包括支援センターの窓口や電話対応、介護保険サービス、自治体の福祉サービス、民間事業者の高齢者向けサービスなどの利用案内を行うほか、地域の集まりや活動の支援など、幅広く総合的に対応しています。
- 権利擁護業務
相談業務は高齢者本人だけでなく、介護に不安や悩みを抱えた家族に対しても応じており、ネットワークの構築も含めて支援を行っています。
認知症などにより金銭管理が難しくなった高齢者が、詐欺や金銭的な搾取といった被害から身を守るために、成年後見制度の活用をサポートしたり、虐待被害の防止や早期発見に努め、高齢者の権利を守る取り組みを行います。
- 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務
高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、医療・保健・介護の専門家から地域住民など、さまざまな職種や関係機関と連携して、包括的・継続的なケアマネジメントを行います。
地域ケア会議の開催やケアマネジャーへの個別相談・アドバイスなども行い、地域における連携や協働の体制作りも進めていきます。
地域包括支援センターの頼れる専門職
地域包括支援センターには保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)の3職種が配置されています(自治体の判断で2職種の場合もあります)。
- 保健師(または地域保健などに関する経験のある看護師)
地域の介護予防ケアマネジメント業務を主に担当しています。
介護予防教室の開催や認知症関連の支援も行います。
- 社会福祉士
ソーシャルワーカーとも呼ばれ、さまざまな理由で日常生活に困難が生じた方の相談やサポートに応じます。
虐待防止活動や権利擁護、在宅介護の悩みや相談など幅広い業務を行っています。
- 主任介護支援専門員
地域のケアマネジャーに対して指導や支援、支援困難事例へのアドバイスなど専門性の高い業務を行います。
地域包括支援センターの活用方法
地域包括支援センターの管轄地域に住む65歳以上の高齢者、またはその支援などに関わっている人が利用できます。
利用する場合の注意点など
地域包括支援センターを利用する場合、以下のことに注意しておくと相談がスムーズに進みます。
- 相談したい対象者が住んでいる地域の地域包括支援センターを利用する
親の介護相談であれば、親が住んでいる場所の地域包括支援センターを利用します。
自治体独自のサービスが異なる場合や、介護予防への取り組みにも地域差があるため、相談できる地域包括支援センターはどこなのか調べておきましょう。
- アポイントメントを取る
地域包括支援センターの職員は、高齢者宅への訪問で不在のことも多いため、相談が必要な場合は日程をあらかじめ調整しておくことがおすすめです。
- 最初の相談は電話でも可能
相談は電話でも可能です。
遠方に住む親が心配だけれど、仕事や家庭の事情などで行くことができないときは、電話で問い合わせをしてみましょう。
- 相談したいことをメモしておく
いざというときに、聞きたいことがまとまらなかったり、聞き忘れてしまうことがあります。
例えば認知症の症状などは、言葉にするとうまく説明できないこともあります。
念入りな準備は必要ありませんが、何を相談したいのか・聞きたいのかをまとめておくとよいでしょう。
- 相談は無料
地域包括支援センターでの相談は一切費用がかかりません。
ただし、紹介されるサービスや制度の利用は有料の場合が多いため、十分な説明を受けて理解した上で利用しましょう。
地域包括支援センターへの相談は早めが吉
元気なうちから地域で行われている介護予防体操や集まりに参加することで、人との交わりを持つことが良い刺激となっていきます。
高齢者がいつまでも介護を必要としないように、介護予防の意味でも地域包括支援センターを利用するとよいでしょう。
さらに、「地域で見守る目」も増えるため、何か異変や病状の変化があれば気づく確率も高まります。
それが「介護の備え」になっていきます。
まとめ
地域包括支援センターは高齢者に関わることであれば何でも相談できます。家族でなくても、ご近所の高齢者が心配な場合でも応じてくれます。
高齢者自身は困っていることがあっても遠慮したり、「自分はまだ大丈夫」と過信している場合もあり、相談しないケースが目立ちます。
そのため、家族や近所の人が「おかしいな」と感じて相談することで大ごとに至らない場合もあります。
高齢者に対して不安や心配があれば、ささいなことでも躊躇せずに相談してみましょう。