高齢者が日々快便でいることは、とても重要です。快便は、消化器系の健康を保つだけでなく、全身の健康にも大きな影響を与えます。便秘が続くと、腹痛や不快感を引き起こすだけでなく、認知症の悪化や食欲不振、さらには精神的なストレスにもつながります。
便の状態は体調や病気のシグナルにもなるため、特に介護が必要な高齢者は、日頃から「やわらかさ、におい、色」などをチェックしておきましょう。
この記事でわかること
- 良い便の状態(理想の便)がわかる
- 便の色で異常を察知できる
- 快便にするためには、どうすればよいのかがわかる
体のシステムとしての排便
食べたものを胃腸で栄養や水分を吸収し、体に不要なカスなどが便になります。排便は欠かせない体のシステムで、生きていく上で重要な役割を果たしています。
消化→吸収→排便が問題なく行えているからこそ、心身が安定して健全な状態を維持することができるのです。
こんな便が理想
爽快感とスッキリ感を得られる便は、バナナ状で適度にやわらかく、少しのいきみと腹圧でスルリと排せつできるのが理想です。
さらに「やわらかさ・におい・色」を確認することで健康状態がわかり、異変があれば気づくことができます。
理想の便1:「やわらかさ」をチェック
理想の便かどうかは、含まれる水分量で決まってきます。全体の70~80%ぐらいの水分が含まれていれば理想的な便となります。水分が60%以下になると「コロコロ」とした硬い便になり、逆に90%以上になると「ベチャベチャ」な下痢状態となります。
便の硬さや形状の判断には、イギリスのブリストル大学が1997年に提唱した「ブリストルスケール」を参考にして確認してみましょう。
理想の便2:「におい」をチェック
「におい」も便の状態を知るのに重要な情報となります。
便の「におい」に影響するのが腸内細菌の死骸です。
腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分けられますが、中でも「悪玉菌」は肉や脂などをエサにし、体内で分解するときに悪臭を発生させます。
さらに便秘などで腸内に長く便が留まると「悪玉菌」がさらに増えるので、悪臭もそれだけ強まります。過剰に「悪玉菌」を増やさないためには、「善玉菌」が増えるような食物繊維の豊富な野菜や果物、味噌や醤油などの乳酸菌、お酢やヨーグルトなどの発酵食品を多く摂ることです。「善玉菌」が増えると便秘が改善し、便の臭いも抑えらえるようになります。
※日和見菌:腸内環境により、善悪どちらにもなりうる菌
理想の便3:「色」をチェック
調子の良い便の色は「黄土色~茶色」です。しかし、便秘などで腸に長くとどまった便の色は変化していきます。
便の色は病気のシグナルかもしれないので、下記のような色の場合は注意が必要です。
白・灰色
脂肪の摂りすぎで消化不良か、その他の病気である可能性があります。
(バリウム検査後も同じような便が出ますが問題ありません)
黒色
胃腸から出血している場合があります。
(鉄剤などの薬が影響している場合は問題ありません)
赤色
痔からの出血、もしくは腸の病気が隠れているかもしれません。
注意
便の色に異変がある場合は、医療機関を受診しましょう。
腸内が善玉菌優位になると酸性となり、便は黄褐色になります。逆に悪玉菌が繁殖しやすい環境になるとアルカリ性となり、便は黒っぽい色になります。
スッキリと爽快感があるかも大切
排便の間隔には個人差があり、一般的には「3日以上排便がない場合」を便秘と言われていますが、3~4日に1回という方もいます。
基本的には「定期的に体外へ排せつすべき量」の排便があるか、「スッキリと爽快感」を感じているかどうかです。
毎日排便があっても爽快感がない場合
毎日排便はあるが、便が硬くて排せつ時に痛みがある、便が全部出し切れていない、腹部の張りが解消しないなどの不快感がある場合は、便秘のケアが必要かもしれません。
便は主に以下の成分で構成されています。
- 80%が水分
- 20%が固形物
このように、便の大部分は水分で、残りの固形物は食べかすや腸内細菌、剥がれた腸粘膜などで構成されています。これらの成分がバランスよく構成されていれば、快便になります。
そのためには、下記に配慮していけば、快便でいられるということです。
- 80%の水分が保てるように、必要量の水分を毎日摂る
- 十分な食べかすが残るように、食物繊維を多く摂る
- 腸内細菌を健康に保つために、発酵食品などを積極的に摂取する
Memo
腸内細菌は非常に多様で、1グラムの便の中に約6000億〜1兆個の細菌が含まれています。
腸内には1000種類以上の細菌が存在し、そのバランスや種類は食生活や住む地域、年齢などによって大きく異なります。
まとめ
便は体の異変を知らせてくれるシグナルでもあり、健康のバロメーターと言えます。
スッキリとした爽快感のある排便ができていれば、体が健全な状態となり、認知症の症状も落ち着いた状態を維持できます。
日々の便をチェックし、体調が良い状態で安定しているかを確認していきましょう。