高齢者は便秘で悩む方が多く、下剤を常時服用している場合も少なくありません。
便秘になると腹部の張りや腹痛、食欲不振、活動量の低下など、生活に悪影響をもたらします。
便秘の原因は複数の要素が重なって症状を引き起こしますが、「便秘を解消するため」という結果を求めるだけで、原因を無視して下剤を使うことはおすすめできません。
下剤は便を無理に排出する薬剤で、大腸機能を損なう可能性があります。
特に認知症の方は腸が強く刺激を受けることで、症状に影響を及ぼします。
便秘薬の種類や効果を知り、便秘を解消するより良い方法を考えていきましょう。
この記事でわかること
- 下剤の種類と効果
- 下剤に頼らず便秘を解消する方法
- 認知症の方が下剤を服用する際に注意すること
下剤の種類と効果
下剤には以下のような種類があります。
機械的下剤
便に含まれる水分を増加させ、硬くなった便を柔らかくする/ゆっくりと作用
- 塩類下剤
【代表的な薬剤】
酸化マグネシウム マグミット カマなど
【主な作用】
浸透圧の作用により腸内に水分を集め、便をやわらかくする
※浸透圧とは・・・水が濃度の高い方へ移動するときに生じる圧力で、浸透圧が高いほど吸水力も大きくなる
多量の水とともに服用することが必要
- 膨張性下剤
【代表的な薬剤】
カルメロース、プランタゴ、オバタ種子、寒天、食物繊維
【主な作用】
腸管内の水分や飲んだ水を吸収することで便を大きくし、腸に物理的な刺激を与えることで排便を促す
胃でも膨れるので、もたれた感じがあるかもしれない
多量の水とともに服用することが必要
- 浸潤性下剤
【代表的な薬剤】
ジオクチルソジウムスルホサクシネート
【主な作用】
界面活性作用によって表面張力を低下させ、便の中に水分をしみ込みやすくして便を柔らかくする
他の機械的下剤に比べて作用が弱め
多量の水とともに服用することが必要
刺激性下剤
腸を刺激して短時間で排便を促す/強い下剤
- 大腸刺激性
【代表的な薬剤】
アントラキノン系(センノシド、センナ、ダイオウ末)
フェノールフタレイン系(フェノバリン、ラキソナリン)
ジフェニルメタン系(ビサコジル、ピコスルファートナトリウム)
【主な作用】
腸の神経を刺激することにより、腸の運動を高めるて排便を促す
下剤が過量になると腸内炎症を引き起こす
常用が続くと増量しないと効かなくなる
- 小腸刺激性
【代表的な薬剤】
ヒマシ油
【主な作用】
小腸及び盲腸を収縮させて排便を促す
効き目が早く下痢や腹痛が起こりやすい
副作用は比較的少ない
刺激性下剤は短期間に腸を空にする薬剤
刺激性下剤は腸粘膜を科学的に刺激することで強い蠕動運動を起こさせ、一気に便を排せつさせます。
下剤服用後の回復期を便秘と捉えない
刺激性下剤服用後は腸内(主に大腸)がダメージを受け、回復するまで便が作られないことがあります。その間を便秘と思ってしまい刺激性下剤を重ねて服用すると、ますます腸内環境は悪化していきます。
さらに刺激性下剤は長期にわたって服用すると腸が刺激に慣れてしまい、効果が得にくくなります。
施設に入居している方は要注意
高齢な家族が施設に入居している場合は、下剤が適切に使用されているかをチェックしておきましょう。残念なことに施設によっては「自然排便」になるようなケアが十分にされず、便秘回避のために数種類の下剤を使用している場合があります。
刺激性下剤を長期間常用していないか、便秘を解消するようかケアが行われているかを聞いてみましょう。
多くは1日に必要な水分が摂れていないことが原因なので、水分摂取量も併せて施設側に確認するとよいでしょう。
便秘解消は生活習慣の改善が基本
数日便が出ない、便が硬いため常に排便に苦労しているという理由で下剤を使う前に、生活習慣を改善することが王道となります。
便秘はさまざまな要因が重なっていることが多いため、どのような状態の便秘でも生活改善が有効な解消法となります。
食事の見直し
食物繊維を十分に取ることで腸内の善玉菌を優位にし、便の膨張にも役立つので、効果的に便秘を解消できます。ヨーグルトなどの乳酸菌も腸内細菌を正常化し、腸内環境を改善してくれます。
水分の摂取
必要量の水分を摂ることで便が柔らかくなり、排便しやすくなります。
高齢者は体内に蓄積できる水分量が低下しているため、1日に1,500ml以上の水分が摂る必要があります。水分を十分に摂るだけで便秘が解消するケースはわりと多くあります。
生活リズムを整える
毎日同じ時間に睡眠をとり、決まった時間に起床する。いつもと変わらない時間に食事をし、適度な運動する。これらが生活リズムとして定着することで、ほぼ同じ時間帯に・定期的に排便できるようになるのです。
認知症の症状は排便と大きく関係している
認知症の方は「出そうで出ないとき」、つまり直腸に便が停滞することで交感神経が刺激され、落ち着かない症状が悪化します。
下剤を服用している場合も注意が必要です。下痢を起こしたり急に腸が刺激されることで腹部痛や不快感を感じ、攻撃的になったり動き回ったりと、周囲が抑制できないほど激しい症状となってしまうことがあります。
認知症の方は不快感や痛みを訴えることが難しくなるため、「自然排便」となるようなケアが望ましいです。
まとめ
排便は食事や活動性、生活リズムに関係しているにもかかわらず、下剤だけを使いコントロールしようとするのは無理があります。生活習慣を改善せずに服用を続ければ、体調が崩れるのも当然かもしれません。
強い便秘で生活に支障がある場合は、薬剤の力を借りて排便することが望ましいこともあります。しかし、本来は「自然排便」が一番体に負担がなく、排便リズムも整いやすいことを認識しておきましょう。