
家族介護において、自宅での入浴介助は多くのトラブルが発生しがちです。
- 浴槽から立ち上がれなくなった
- 浴室のドアで足を傷つけてしまった
- 滑って転ばせてしまった
- ふらついたので体を支えたら、自分が腰を痛めてしまった
入浴介助される側は裸になっているので、転倒や物にぶつかることで、大けがをする可能性があります。さらに、浴室は介助するには狭く、適切な介護技術が身に付いていないと、介護者自身の体を痛めてしまうこともあります。
この記事では、家族介護者にとって負担が大きい入浴介助を全面的に介護サービスに任せる方法をお伝えします。介護を楽に続けていくためには、負担になる介護ほどサービスに繋げるのがコツとなります。
家族介護の負担となる入浴介助

自宅での入浴介助は思った以上に負担が大きく、身体的にも精神的にも大変な作業です。ここでは、その具体的な困難やリスクについて見ていきます。
浴室はキケンだらけ
入浴介助を行う際、浴室にはさまざまな危険が潜んでいます。以下に、その具体的な危険箇所をあげてみます。
- 床の滑りやすさ:濡れた床は転倒のリスクが高まります。
- 浴槽の縁:浴槽の縁をまたぐ際に足を引っ掛けたり、バランスを崩して転倒する可能性があります。
- 洗い場:石鹸やシャンプーの使用で床がさらに滑りやすくなります。
- 手すりや補助具の不足:安全に入浴するための手すりや補助具が不足していると、立ち上がりや移動が困難になります。
- 温度差:浴室内の温度差が大きいと、血圧の変動が起こりやすく、目まいや意識消失のリスクが高まります。
- 狭いスペース:狭い浴室内では自由に動き回るのが難しく、転倒や事故のリスクが増します。
古い家屋になると浴室に段差があったり、ドアの縁が鋭利な金属製になっていたりと、さらに危険な要素が増えます。
事故やケガのリスクが大きい
入浴は裸で行うため、体を保護する衣類がなく、転倒やバランスを崩したときに直接肌が傷つくリスクが高まります。さらに、温まることで血行が良くなっているため、ちょっとした傷でも出血量が多くなる場合もあります。
長時間の入浴になると、立ち上がった際に急に血圧が下がって目まいを起こすことも考えられます。結果として骨折や打撲などの重大な怪我に繋がることもあります。
介護者の体を痛めることにも
介護者自身も、入浴介助の際に身体的負担を強いられることが多く、特に介護者が高齢である場合、その負担は非常に大きくなります。無理な姿勢で相手の体を支えたり持ち上げたりすると、腰や背中に過度な圧力がかかり、腰痛や筋肉痛を引き起こす可能性があります。
さらに、介助される側が滑ったり、ふらついたりした場合、介護者は瞬時に対応する必要があります。このような急な動作を繰り返すと、関節や筋肉に負担がかかりやすくなります。また、無理な力を入れて相手の体を支えることで体力を消耗し、慢性的な疲労に悩まされることもあります。
入浴こそ介護サービスを使おう

家族で行う入浴介助には多くの負担やリスクが伴いますが、それを解消するための方法があります。それは、介護サービスの利用です。専門的な知識と技術を持つスタッフが、安全かつ快適な入浴をサポートしてくれるため、介護される側(以下、利用者)も介護者も安心して入浴することができます。ここでは、介護保険で利用できる入浴関連のサービスを見ていきましょう。
訪問介護での入浴介助
訪問介護では、ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護として利用者の入浴をサポートします。ホームヘルパーは、体調確認から浴室の準備、洗髪や体の洗浄、入浴後の体調再確認や後片付けまでを行います。プライバシーを確保しつつ、安全な入浴を提供します。
メリット
プライバシーの確保:自宅での入浴が可能なため、利用者のプライバシーが守られます。
安心感:専門の介護者がサポートするため、利用者も家族も安心して利用できます。
柔軟な対応:一人暮らしであれば、家事を含めたサービスを同時に利用することもできます。
デメリット
医療行為はできない:巻き爪などの問題がある爪切りや、傷の処置などはできません。
重度化すると対応できない:ホームヘルパーの介助にも限界があり、重度化してくると対応ができなくなります。
デイサービスでの入浴
デイサービスでは、利用者が施設に通い、入浴や他のサービスを受けることができます。専用の浴槽や設備が整っており、利用者がリラックスして安全に入浴できる環境が提供されます。また、施設内では他の利用者との交流も図れるため、社会的なつながりを保つことができます。
メリット
安全性:手すりなどが完備され、施設によってリフト付き浴槽、機械浴など専用の設備が整っています。看護師もいるため、入浴前の健康チェックも行います。
社会的なつながり:デイサービスによっては大浴場があり、入浴しながら他の利用者との交流ができ、社会的なつながりを保つことができます。
リフレッシュ:施設に通うことで、食事やレクリエーション、体操など、入浴以外のサービスも楽しめます。
デメリット
入浴回数の制限:入浴希望者が多いと、入浴日が制限されることがあります。例えばデイサービスを週3日利用していても、入浴は週1回しか利用できないこともあります。
集団での利用:他の利用者と一緒にサービスを受けるため、個別の対応が難しい場合があります。
訪問看護での入浴介助
訪問看護では、看護師が自宅を訪問し、医療的なケアを行いながら入浴の介助を提供します。特に、医療依存度の高い方や体調が不安定な方に適しており、医師の指示のもと、バイタルチェックや入浴中の観察も含めて、安全な入浴をサポートします。
メリット
医療的なケア:看護師がバイタルサインのチェックや必要な医療処置を行いながら安全に入浴をサポートします。
安心感:医療の専門知識を持つ看護師がサポートするため、急な体調変化にも迅速に対応できます。
個別対応:利用者の健康状態に合わせた個別対応が可能です。
デメリット
入浴後の掃除などは行えない:浴室掃除や洗濯などは家族が行うか、一人暮らしで家事が行えない場合は訪問介護を利用します。
費用負担:訪問介護で利用する身体介護よりは費用がかかります。
訪問入浴介護での入浴
訪問入浴では、専用の浴槽やお湯を持ち込んで自宅での入浴を提供します。専門のスタッフが浴槽の設置、入浴介助、片付けまでを行い、利用者が自宅で快適に入浴できる環境を整えます。基本的に看護職員1名、介護職員2名のスタッフが訪問するので、寝たきりや看取り期の方でも安心して利用することができます。
メリット
自宅での入浴:専用の浴槽を持ち込むため、自宅での入浴が可能です。
3名のスタッフがサポート:複数名で一連の入浴を介助してもらえるため、身体的に重度な方でも入浴が実施できます。
看護職員の同行:体調が不安定な方でも、看護師のサポートを受けながら安心して入浴ができます。
デメリット
医療行為は行えない:看護職員が同行していますが、入浴支援と関連のない医療行為は行うことができません。医療的なケアが必要な場合は、訪問看護を利用する必要があります。
費用負担:3名のスタッフが訪問するため、費用は高めとなります。
それぞれのサービスには独自のメリット・デメリットがあり、利用者のニーズや状況に応じて選ぶことが重要です。家族や介護者、ケアマネジャーと相談しながら、最適なサービスを検討してください。
まとめ
入浴介助は家族介護の大きな負担となることがありますが、介護サービスを利用することで安全かつ快適に入浴することができます。訪問介護、デイサービス、訪問看護、訪問入浴介護など、利用者の状況に応じたサービスを選びましょう。
家族や介護者の負担を軽減し、安心して入浴を楽しむために、適切な介護サービスの利用をおすすめします。