介護保険制度

デイサービスの送迎に苦情を言いたい!の前に読むべき背景と解決策

2025年1月10日

デイサービスは、高齢者が日中を安心して過ごせる場所を提供していますが、利用者やその家族からの不満やクレームも少なくありません。この記事では、デイサービスの送迎や介護職員への不満や疑問に対して、利用者や家族の目線からどのように伝えればよいかを、デイサービス管理者経験のある筆者が紹介します。

デイサービスへ不満がある場合の相談先

利用しているデイサービスに不満を感じ、苦情を伝えたいときはどこに相談すればいいのでしょうか。

苦情・相談先

伝えたい内容にもよりますが、まずは利用しているデイサービスに相談してみましょう。直接言いにくい場合は、担当のケアマネジャーに伝えても良いでしょう。対応に納得できない場合は、第三者機関や国民健康保険団体連合会に相談することも可能です。

大きな企業では、独自の相談・苦情窓口を設けていることがあります。これらの情報は利用契約書(重要事項説明書)に記載されています。また、区の介護保険に関する窓口や地域包括支援センターでも相談できます。

苦情・相談は適切な人に伝える

デイサービスに直接伝える場合は、施設長や生活相談員に相談しましょう。例えば、介護職員の態度についての苦情は、根本的な問題が他にあるかもしれません。そのため、本人や周囲のスタッフに伝えても解決しなかったり、誤解を生じてしまう場合もあります。苦情や相談は、適切な立場の人に伝えることが重要です。

苦情・相談は整理して伝える

苦情や相談を伝えるときは、冷静に話すことが大切です。そのため、以下の手順で考えをまとめておくと良いでしょう。

【苦情・相談の前に整理しておくこと】

  • 出来事を具体的に整理する
  • どう感じたかをまとめる
  • 要望(改善点)を明確にする

次に、苦情・相談で多い「送迎」と「介護職」について、具体的な内容とその背景について詳しく見ていきましょう。

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送迎に関する苦情

デイサービスに寄せられる苦情の中で目立つのが、送迎に関するものです。利用者や家族にとって、定時に送迎が行われ、安全かつ快適な運転がされることは当然の要望です。

苦情の内容(例)

送迎に関する苦情例は以下の通りです。

  • 送迎時間の遅延:予定時間に車が到着しない、遅延の連絡がない
  • 運転の安全性:ドライバーが安全運転をしない、運転が粗い
  • ドライバーの態度:ドライバーが親切でない、無礼な態度を取る

事情と解決策:送迎時間の遅延

【デイサービスの事情】

デイサービスの送迎は、多くの利用者のニーズを満たすため、スケジュール管理が非常に複雑になります。家族の仕事やヘルパーのスケジュールに合わせることも多く、時間指定が増えると対応が難しくなります。また、渋滞や踏切などの地域特有の問題が送迎の遅れを引き起こすこともあります。遅延が生じた場合、ドライバーや職員は他の車両と連絡を取り合い、予定を調整することもあります。

【利用者や家族視点からの解決策】

  • 余裕を持った時間設定:家族が仕事などで時間に融通が利かない場合は送迎が遅延することを念頭に置き、迎えの時間を早め・送りの時間を遅めに調整してもらいましょう。
  • 柔軟な時間設定:時間を指定する必要がない場合は、30分程度の幅を持たせるか、「〇時までに迎えがあればOK」としておくと、デイサービス側も対応しやすくなります。
  • 事前連絡の確認:必要に応じて、デイサービス到着前や遅れ・早まりの連絡を依頼しましょう。
  • 苦情を伝える場合:毎回時間が守られない、遅れた理由や事情の説明がない場合など不満があれば、この記事冒頭の「苦情・相談の前に整理しておくこと」を参考にして伝えましょう。

事情と解決策:安全運転やドライバーの態度

【デイサービスの事情】

デイサービスでは、送迎ドライバーとして中高年の方を採用することがあります。経験豊富なドライバーであっても、運転のクセがあったり、高齢者を乗せて運転する場合の注意点まで意識が向かない場合もあります。

また、前職で接遇の技術が求められなかったドライバーは、接遇スキルが不十分なことがあります。そのため、ドライバーにはそのつもりがなくても、利用者や家族が不快に感じることがあるかもしれません。

こうした問題は、入社後の運転指導や接遇研修でカバーするのが一般的で、ドライバーには親切で丁寧な対応が求められます。

【利用者や家族視点からの解決策】

  • 責任者に苦情を伝える:不快な態度や運転に不安を感じた場合、ドライバー本人に直接伝えず、デイサービスの施設長や生活相談員に伝えましょう。送迎業務は一歩間違えれば重大事故になる可能性があります。常に安全性を高めようとする姿勢がデイサービスには求められます。
  • 接遇の改善要求常識を逸脱する態度や言動があった場合は、改善を求めましょう。

Memo

最近では、送迎ルートを自動で組む「送迎システム」を導入するデイサービスが増えています。利用者や家族はアプリで車の位置を確認できるなど、便利な機能がある場合もあります。デイサービスを選ぶ際には、送迎業務がどの程度デジタル化されているかをチェックすると良いかもしれません。

介護職員に関する苦情

介護職員の対応に関する苦情には、冷たい態度、不親切な対応、コミュニケーション不足などが挙げられます。利用者や家族にとって、親切で丁寧な対応が期待されているため、わずかな不満でも大きな問題と感じられることがあります。

苦情の内容(例)

介護職員に関する苦情例は以下の通りです。

  • 態度や接遇(コミュニケーション):冷たい、不愛想、親切さや丁寧さが欠けている、利用者への声掛けがない(少ない)、口調がきつい、急かされる
  • 介護技術や知識の不足:おむつの当て方が雑、(傷などに対し)伝えた通りの処置ができていない
  • 家族に対して報告忘れ:怪我をしたのに報告がない、体調不良で寝ていたが報告がない、昼食を全く食べなかったのに理由の報告がない

事情と解説策:態度や接遇(コミュニケーション)

【デイサービスの事情】

介護職員は、利用者に応じて接し方を変える必要があります。体調の悪い人、痛みを抱える人、うつ傾向の人、認知症の人など、それぞれに適した対応が求められます。

利用者の生活背景も様々です。元企業の重役、自営業者、職人、教員、主婦など、多様なバックグラウンドを持ち、それに合わせた接遇が必要です。そのため、総合的高度な接遇(コミュニケーション)スキルが求められます。

介護職員は入職時や定期的な研修で接遇を学びますが、全員が同じスキルを持てるわけではありません。現場での経験を通じてスキルを向上させることが求められます。

Memo

人手不足が原因で、介護職員の余裕がなくなることが大きな問題となっています。慢性的な人手不足のため、細やかな配慮が行き届かず、利用者やその家族から不満が生じることがあります。職員が真摯に利用者と向き合いたくても、それができないジレンマがあることも事実です。

【利用者や家族視点からの解決策】

  • 苦情はしっかりと伝える:介護職員の不適切な態度や言葉遣いがあれば、冷静に整理したうえで伝えましょう。サービスの質向上のため、基本的にデイサービス側は苦情を真摯に受け止めてくれます。
  • デイサービスの目的を理解する:デイサービスは介護保険サービスの一つであり、利用者の自立支援を目的としています。「やってもらうのが当たり前」ではなく、「できることは自分で行う」ことが基本です。冷たい、不愛想と感じた行為が、自立を促すためのものであったかどうかを振り返ることも必要です。

事情と解説策:介護技術や知識不足

【デイサービスの事情】

介護職員には、おむつの適切な当て方、体位変換の技術、食事介助の方法など、幅広い技術や知識が求められます。これらが不足すると、利用者の健康や快適さに影響を及ぼします。また、褥瘡(床ずれ)の予防や糖尿病管理など、特定の健康状態に応じたケアが提供されない場合、利用者の状態が悪化するリスクが高まります。

技術や知識不足の背景には、教育や研修の機会が限られていることが挙げられます。新人職員の実践経験不足や、最新の介護技術や知識を学ぶ機会が少ないのが現状です。また、人手不足も職員の技術や知識の向上を妨げる要因となっています。

【利用者や家族視点からの解決策】

  • 問い合わせて詳細を確認:技術や知識不足が原因で利用者の健康や快適さに悪影響が出た場合、デイサービス側に問い合わせて詳細を確認しましょう。その上で問題を整理し、苦情として伝えます。
  • ケアマネジャーに相談する:出来事をケアマネジャーにも伝え、不安や不満が続く場合は解決をサポートしてもらいましょう。
  • 技術の高いデイサービスを探す:身体的に重度な利用者は医療依存度が高く、きめ細やかな対応が必要です。そのような場合は介護と医療的ケアを提供している療養通所介護(医療型デイサービス)の利用が望ましいかもしれません。

事情と解決策:報告・伝え忘れ

【デイサービスの事情】

デイサービス側が利用者の健康状態やトラブルの報告を怠ると、家族に不安を与えてしまいます。怪我や体調の悪化などは医療機関に繋げる必要があるため、報告がされないと重大な問題に発展することもあります。

報告や伝え忘れは、職員の忙しさやコミュニケーション不足などが原因で発生します。職員は業務が詰まってくると報告を後回しにしがちで、情報共有が不十分になることがあります。

これらを解決するためには、電子カルテなどのデジタル化が必須です。褥瘡(床ずれ)などの悪化、転倒や食欲不振など、家族に伝えるべきその日の情報は、当日のうちに正確に伝えられる仕組みづくりが求められます。

【利用者や家族視点からの解決策】

  • 苦情や相談を伝える:この記事冒頭の 「苦情・相談の前に整理しておくこと」を参考にし、冷静に伝えましょう。報告や伝え忘れが続く場合はケアマネジャーを交えて相談し、改善を求めましょう。
  • デジタル化が進んでいるデイサービスを利用する:デジタル化を推進し、業務効率化に力を入れているデイサービスでは、職員間の報告や伝達が適切に行われ、それにより利用者や家族への伝え忘れを防ぐことができます。

まとめ

苦情や相談をする際は、「1. 具体的に出来事を整理する  2. どう感じたかをまとめる  3. 期待する改善点を明確にする」を参考にして、物事や気持ちを整理して伝えるようにしましょう。

お世話になっているからと躊躇する気持ちもありますが、デイサービスの適切な運営と利用する側の信頼がないと介護保険事業は成り立ちません。お互い誠意ある対応を心がけ、より良いサービスが提供されるようにしましょう。

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