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高齢者のたんぱく質|調理時短のお手軽な食材もご紹介

高齢者にとって、たんぱく質は健康維持に欠かせない栄養素です。特に「フレイル」と呼ばれる、老化による体や心の衰えを防ぐには、たんぱく質の摂取が大切です。

この記事では、高齢者のたんぱく質不足が引き起こす具体的な症状と、それに伴う健康リスクについて詳しく見ていきます。さらに、たんぱく質を効率よく摂取するためのポイントや、おすすめの時短食材を紹介します。

高齢者も若者と同量のたんぱく質が必要

たんぱく質の不足は筋肉量の減少とフレイル状態を招くため、予防には十分なたんぱく質の摂取が必要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、65歳以上の高齢者が1日に摂取すべきたんぱく質の推奨量は以下の通りです。

年齢男性(g/日)女性(g/日)
50~64歳6550
65~74歳6050
75歳以上6050

Memo

フレイルとは、高齢者が年齢とともに体力や筋力、精神力が低下する状態です。これにより、日常生活が難しくなり、介護や医療が必要となります。

たんぱく質とはなに?

たんぱく質は、健康を維持するために欠かせない基本的な栄養素の一つです。たんぱく質の具体的な役割について見ていきましょう。

たんぱく質は三大栄養素のひとつ

たんぱく質は、体を構成する基本的な栄養素の一つであり、生命の維持に欠かせない重要な成分です。私たちの体は約20%がたんぱく質でできており、筋肉、臓器、皮膚、髪の毛、骨、歯、ホルモンや酵素など、さまざまな部分に存在して重要な役割を果たしています。

アミノ酸によって形成されている

たんぱく質は20種類以上の異なる機能を持つアミノ酸が連なって構成されています。私たちの体は、これらのアミノ酸を組み合わせて新しいたんぱく質を作り出し、細胞や組織を修復したり、新しい細胞を生成したりします。

たんぱく質不足による症状

たんぱく質が不足すると、体にさまざまな影響を及ぼします。以下に具体的な症状を挙げます。

筋肉の減少(サルコペニア)

たんぱく質が不足すると、筋肉の成長と修復が妨げられ、筋肉量が減少します。これにより、筋力が低下し、日常生活での動作が困難になりやすくなります。特に高齢者では、筋力低下によって転倒や骨折のリスクが高まります。

Memo

サルコペニアとは、加齢や運動不足、栄養不足が原因で筋肉量が減少し、筋力や身体の機能が低下する状態です。これにより、日常生活に支障をきたし、例えば立ち上がりや歩行が困難になるほか、転倒や骨折のリスクが高まります。

サルコペニアの悪循環の図
筋肉量が減少することで、運動量が低下する。体を動かさないことで食欲が低下し、低栄養状態となる。さらに筋肉量が低下するという悪循環に陥る。

免疫力の低下

たんぱく質は免疫システムの大切な構成要素です。たんぱく質が足りないと、免疫力が下がり、風邪や感染症にかかりやすくなります。もし「風邪がなかなか治らない」や「風邪をよくひく」と感じることがあれば、たんぱく質不足かもしれません。

肌や髪への影響

たんぱく質が不足すると、肌や髪の質にも影響を及ぼします。肌の乾燥やかゆみ、髪の抜け毛や切れ毛が増えることがあります。たんぱく質は肌の弾力と健康を保つコラーゲンや髪の強さとしなやかさを与えるケラチンの供給にも重要で、不足するとこれらの成分が十分に供給されず、肌と髪の健康が損なわれます。

思考力低下

たんぱく質が不足すると、神経伝達物質の生成も減少し、集中力や記憶力が低下します。これにより、ぼんやりしたり、やる気が出なかったりする状態が続くことがあります。特に高齢者では、思考力の低下が生活の質に大きな影響を与えます。たとえば、日常の判断力が鈍り、薬の管理が難しくなったり、社会的な交流が減少したりすることが考えられます。

疲れやすい

たんぱく質不足は、体がエネルギー不足に陥りやすくなるため、疲れやすくなります。疲労感や倦怠感が続くことで、日常生活に支障をきたすことがあります。たんぱく質はエネルギーの生成にも関与しています。

傷の治りが遅くなる

たんぱく質は傷の修復に必要な栄養素です。不足すると傷の治りが遅くなり、さらに免疫機能も低下します。そのため、体の防御機能が弱くなり、感染症のリスクも高まります。

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たんぱく質を含む食品:時短食材もご紹介

たんぱく質を効率よく摂取するためには、どのような食品を選べばよいのでしょうか。以下に、たんぱく質を多く含む食品と調理の時間を短縮できる食材をご紹介します。

魚は高品質なたんぱく質を豊富に含み、健康に多くのメリットをもたらします。特に青魚には、オメガ3脂肪酸が含まれており、心臓の健康をサポートします。

  • ツナ缶:手軽に開けてそのまま食べられるので、サラダやサンドイッチに最適です。
  • サバ缶:味付きのものも多く、温めるだけで簡単に食べられます。お弁当にも便利です。
  • スモークサーモン:そのまま食べることができ、サラダやベーグルに添えると美味しいです。
  • 魚肉ソーセージ:冷蔵庫にストックしておけば、いつでも簡単に食べられます。
  • 冷凍魚フィレ:冷凍庫に常備しておけば、グリルやフライパンで簡単に調理できます。

便利食材

冷凍フィレとは、新鮮な魚や肉を切り分けてすぐに冷凍したものを指します。この方法により、風味や栄養価を保ちながら長期保存が可能です。調理する際には、自然解凍または電子レンジを使って解凍してから、焼いたり揚げたりして使うことができます。冷凍フィレは便利で手軽に使える食材として人気があります。

豆類

豆類は植物性たんぱく質の優れた供給源です。食物繊維も豊富で、消化を助けるだけでなく、長時間にわたり満腹感を得ることができます。特に大豆製品(豆腐、納豆、豆乳など)やレンズ豆、黒豆、ひよこ豆などが優れた選択です。

  • 豆腐、納豆:手間をかけずに食べることができます
  • 缶詰豆・サラダ豆:そのままサラダに加えたり、スープに入れたりするだけで手軽にたんぱく質が摂れます。
  • 豆乳飲料:普段の飲み物に豆乳を取り入れることで、手軽にたんぱく質を補給できます。

卵は完全栄養食品として知られており、たんぱく質の供給源として非常に優れています。ビタミンやミネラルも豊富で、毎日の食事に取り入れやすい食材です。

  • ゆで卵:前もってゆでておけば、簡単にそのまま食べられるので便利です。
  • パッケージされた卵サラダ:すぐに食べられるので、忙しい時でも手軽にたんぱく質が摂れます。

便利食材

パッケージされた卵サラダとは、事前に調理・調味されてパック詰めされた卵サラダのことです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売されており、すぐに食べられる状態で提供されています。忙しい時や手軽にたんぱく質を摂取したい時に便利です。サンドイッチに挟んだり、サラダのトッピングとして使ったりできます。

乳製品

乳製品にはたんぱく質が豊富に含まれています。カルシウムやビタミンDも含まれており、骨の健康を保つのに役立ちます。牛乳、ヨーグルト、チーズなどを適量摂取することが推奨されます。また、低脂肪または無脂肪の製品を選ぶことで、カロリーを抑えつつ健康を維持することができます。

  • 牛乳
  • チーズ
  • ヨーグルト:特にギリシャヨーグルトはタンパク質が豊富です。

肉類はたんぱく質を豊富に含んでいますが、脂肪分が少ない部位を選ぶと良いでしょう。鉄やビタミンB群も含まれており、エネルギー代謝や血液の健康に重要です。

  • 鶏胸肉
  • 豚ヒレ肉
  • 牛の赤身肉
  • サラダチキン:野菜とあわせることで、手軽なサラダが作れます。

便利食材

サラダチキンとは、鶏肉をシンプルな調味料で調理し、冷蔵保存した食品です。通常、鶏胸肉を使用し、低脂肪かつ高たんぱく質のため、健康志向の方々やダイエット中の方々に人気です。市販のサラダチキンは、真空パックやカップに入っており、すぐに食べられる状態で提供されています。サラダに乗せたり、サンドイッチに挟んだりして手軽に利用できます。

プロテイン

プロテインは手軽にたんぱく質を補給でき、多忙な生活や食事の準備が難しいときにも便利です。調理の必要がほとんどないため、これこそ最速の時短食材と言えるでしょう。

  • プロテインパウダー:スムージーやシェイクに加えることで、手軽にたんぱく質を補給できます。
  • プロテインバー:間食として摂取することで、1日の総たんぱく質摂取量を増やすことができます。
  • プロテイン入り飲料やヨーグルト:市販のプロテイン飲料やタンパク質強化ヨーグルトを活用するのも一つの方法です。

たんぱく質を効率よく摂るためのポイント

たんぱく質を効率よく摂取するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です

  • 手間をかけない

日常の食事に手間をかけず、調理が簡単な食材や調理済みの食品を使って、たんぱく質を簡単に摂取する方法を見つけましょう。たまにはハンバーガーやピザなどで手軽に済ませるのも良いかもしれません。

  • 毎日続続ける

たんぱく質を毎日適量摂取することが大切です。計画的にたんぱく質を摂取する習慣をつけましょう。。

  • 食材をバランスよく組み合わせる

たんぱく質を含む食品をバランスよく組み合わせることで、効率的に摂取することができます。例えば、魚と豆類、卵と乳製品などを組み合わせると良いでしょう。

  • 炭水化物や脂質も重要

たんぱく質とともに炭水化物や脂質もバランスよく摂取することが大切です。これにより、エネルギーを効率的に供給し、体の基本的な機能をサポートします。

  • 間食にもたんぱく質

間食にもたんぱく質を取り入れることで、1日の総摂取量を増やすことができます。きな粉やナッツ、ヨーグルト、豆乳などを活用すると良いでしょう。

  • たんぱく質の摂りすぎにも注意

たんぱく質は健康に欠かせない栄養素ですが、摂りすぎると健康に悪影響を及ぼすことがあります。過剰なたんぱく質の摂取は腎臓に負担をかけたり消化不良を引き起こす原因になるため、摂取量について心配がある場合は医師と十分に相談しましょう。

まとめ

たんぱく質は、高齢者にとって筋肉の維持、免疫力の向上、フレイルの予防に欠かせない栄養素です。手軽に摂れる食品もあるため、「食べるフレイル予防」として活用していきましょう。

たんぱく質は重要で、適量を摂取することで多くのメリットが得られます。

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