介護保険制度

訪問介護の「できること」と「できないこと」をシンプルに解説

2024年10月23日

訪問介護は介護保険制度に位置付けられたサービスで、運営の財源は国民からの介護保険料や公費が含まれています。大切な税金が使われているのに、不公平なサービス提供がされるわけにはいきません。誰もが納得した介護サービスを受けられるように、「できること」と「できないこと」が細かく定められているのです。

今回はホームヘルパーが対応できること・できないことを具体的にまとめ、解説していきます。

訪問介護の対応「できること」と「できないこと」

訪問介護の業務は、調理や洗濯、掃除などの日常家事を支援する「生活援助」と、入浴や排せつ、着替えなど直接体に触れて行う「身体介護」、病院への通院に車で送迎・乗車・降車・受診手続きなどを行う「通院等乗降介助」があります。
それぞれのサービスには対応できないことがあり、以下の5つに大別されます。

  • 日常生活の範囲を超えたサービス
  • 本人以外の援助
  • 本人ができることの援助
  • 同居家族がいる場合の生活援助
  • 医療行為

これらに該当する介護サービスは行うことができません。

生活援助で対応できること

生活援助は調理や掃除、洗濯などの支援で、利用者の能力に応じて必要な援助を行います。

調理・一般的な調理
・配膳、片付け
洗濯・洗濯機、必要に応じて手洗いでの洗濯
・洗濯物を干す、取り込み、収納
掃除・利用者が使用している部屋、トイレ、浴室など
・ゴミ出し
買い物・生活圏内での食料品・日用品などの買い物代行
その他・処方された薬の受け取り
・布団干し、ベッドメイク
・季節に即した衣替え
・ボタン付けや破損した衣服の補修(程度による)
・室内の換気や室温調整

生活援助で対応できないこと

日常生活の範囲を超えるようなサービスや、同居家族に関わることは行うことができません。

調理・利用者以外の調理など
・行事などの特別な調理(おせちや誕生日の料理など)
洗濯・利用者以外の衣類などの洗濯
掃除・利用者が使わない部屋の掃除
・換気扇やベランダ、車、仏壇などの掃除
・大掃除に該当すること
・同居家族がいる場合の浴室・トイレ(共有場所)などの掃除
買い物・生活圏外への買い物
・嗜好品(お酒、煙草など)
・来客用のお菓子や、お中元の購入など
その他・ペットの世話
・来客へのもてなし(お茶出しなど)
・庭の草むしり、植木などへの水やり
・家具の移動、模様替え  
・宅配便などの梱包、配達手配
・話し相手だけ

Memo

同居家族がいる場合は基本的に家事援助の提供は行えませんが、例外が認められる場合があります。

  • 利用者の家族などが障害や疾病などの理由により、家事を行うことが困難な場合
  • その他の事情により、家事が困難な場合

【例】
・介護者も高齢で筋力低下などから、行うのが難しい家事がある場合
・家族が介護疲れで共倒れなどの深刻な問題が起きてしまう恐れがある場合
・家族が仕事で不在の時に、行われなくては日常に支障がある場合

これらは一例ですが、明確な理由があれば同居の場合でも生活援助が利用できます。

身体介護で対応できること

身体介護は食事や入浴、排せつなど、ホームヘルパーが直接身体に触れて行うサービスになります。

食事・食事摂取の介助
・食事の見守り
入浴・一連の入浴介助(全身浴、部分浴、洗髪、身体の洗浄など)
・身体を拭いて清潔にする清拭
排せつ・トイレやポータブルトイレでの排せつ介助
・オムツ交換
移乗・移動・ベッドや椅子、車いすへの移乗
・車いすや自立の状態での動作・移動介助
・外出時の歩行介助
更衣・整容・衣服着脱の介助
・洗顔、整髪、口腔ケアなど
・爪切り、耳そうじ、髭剃り(電気シェーバー)
外出・日常生活に必要な買い物の同行
・通院同行
・公共サービスの支払いなど
・選挙の同行
・生活資金を引き出すための金融機関への同行
その他・起床や就寝時の介助
・褥瘡(床ずれ)を防止するための寝返りの介助
・服薬介助、飲み忘れのチェック
・体温などの健康チェック

身体介護で対応できないこと

趣味に関することや医療行為に該当することは行えません。

整容・散髪
・T字カミソリやL字カミソリなど刃物を使った髭剃り
マッサージ・痛みやコリを和らげるマッサージ
外出・趣味への同行介助(カラオケ、コンサートなど)
・友人宅や地域の催し、理美容院、お墓参りや冠婚葬祭などへの同行介助

通院等乗降介助で対応できること

通院乗降介助は、要介護者が病院や診療所などに通院する際に、訪問介護員が車で送迎し、乗り降りや移乗、受診手続きのサポートなどの介助を行うサービスです。

移動前の準備・車いすなどの準備
乗降介助・移動や乗り降りの介助
窓口での手続き・受診手続きの介助
薬の受け取り・薬局への同行  
・薬の受け取り介助
外出・通院、選挙、納税、必要不可欠な日常生活品の買い物

通院等乗降介助で対応できないこと

病院内での介助は病院スタッフが行うのが基本ですが、病院側の人手不足や利用者が認知症など特別な理由がある場合は、ケアマネジャーなどに相談し、ケアプランに追加することができることもあります。

院内介助・病院内での移動介助
・病院内での待ち時間の付き添い
外出・趣味や習い事、ドライブ、冠婚葬祭など

医療行為に該当せず、ホームヘルパーが対応できること

ホームヘルパーは介護を専門とする職種であり、医療行為を行うことはできません。医療行為を行えるのは、基本的に医師や看護師などの医療従事者に限られます。

以下の内容であれば医療行為に該当しないため、ホームヘルパーが行えます。

口腔ケア・歯ブラシ等を使用した口腔ケア(重度の歯周病がない場合)
爪切り・爪切り(爪や爪周囲に異常がない場合)
耳そうじ・耳垢の除去
測定・体温測定、自動血圧測定機による血圧測定、パルスオキシメーターの装着
各種処置・軽度な擦り傷、切り傷、やけどなどの処置
・浣腸(市販のディスポーザブルグリセリン浣腸)
・自己導尿の補助(カテーテルの準備、姿勢保持等)
医薬品の使用・服薬の介助(一包化されたもの)
・医師から処方を受けた軟膏塗布(褥瘡の処置を除く)、点眼薬の点眼、座薬の挿入、鼻腔粘膜への薬剤噴霧、湿布の貼付

医療行為の対象となり、ホームヘルパーが対応できないこと

訪問介護では医療行為を行うことができないため、自宅で医療行為が必要な場合は訪問診療や訪問看護の利用が必要です。

口腔ケア・歯周病が重度の場合の口腔ケア
爪切り・爪に異常がある、爪の周囲が化膿あるいは炎症がある
・糖尿病により専門的な管理を要する爪切り
耳そうじ・耳塞栓(耳垢で耳がふさがれている)の状態での耳そうじ
測定・血糖値測定
各種処置・褥瘡など専門的な判断が必要な傷の処置
・ストーマのパウチ交換
・導尿
・摘便
・インスリン注射
・喀痰吸引
・経管栄養、中心静脈栄養
・人口呼吸器の管理

Memo

痰の吸引や経管栄養は医療行為に該当しますが、必要な研修を受けた介護職員であれば、一定の条件下で実施することが可能です。

まとめ

訪問介護でできること・できないことを具体例を交えて解説しました。
実際に訪問介護を利用している本人や家族から、「それぐらいいいじゃない」「今回だけ」などと言われたことがあるホームヘルパーは少なくありません。実際に身体的に動くのが辛そうな高齢者や、忙しい介護者を目の前にすると気持ちが揺れてしまいます。

しかし、決まりを無視してしまうと「あのヘルパーさんはしてくれた」「前はしてくれたのに」など、お互い不快な思いが残って残ってしまうかもしれません。介護保険を利用する側とホームヘルパーがお互いの信頼関係を崩さないためにも、「できること」と「できないこと」の一線は守るようにしていきましょう。

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