認知症の周辺症状は3つのタイプに分けられます。
①葛藤型:状況に対して強く反応する
興奮、暴言、暴力、徘徊、収集癖、異食
②遊離型:無反応、無関心
無感動、無為、無動
③回帰型:過去への回帰
昔の良かった時代へ戻る
今回は②の遊離型について、原因と対処方法についてお伝えします。
※周辺症状とは
BPSD、行動・心理症状ともよばれ、不安な・うつ・不眠・幻覚・妄想などの心理症状や、徘徊、焦燥、攻撃性、介護への抵抗や拒否、異食などの行動的症状を指します。
この記事でわかること
- 「遊離型」の原因がわかる
- 「遊離型」の対処法がわかる
- 4つの基本ケアも同時に行うと効果的
周辺症状の「遊離型」とは
認知症の周辺症状は、興奮や粗暴、徘徊(はいかい)などの落ち着かない症状が目立ちますが、中には意欲低下や何に対しても興味を持たない無関心なども含まれます。
この無関心・無気力・無感動な状態は「遊離型」と呼ばれ、自分の中に閉じこもっており、傍から見ると常にぼーっとしているように見えます。
食事にさえ無関心になる
認知症の周辺症状を軽減するには水分や食事を必要量摂取することが必要ですが、遊離型はこれらのケアが難しくなっていきます。
食事に関心を示さず、食べさせようと口元に運んでも食べません。必要な水分を摂らせることも十分できないため、ますます認知力が低下する悪循環に陥ります。
現実世界から離れてしまう
自分の中に閉じこもってしまい、周囲との関係も築くことができません。現実世界から身も心も離れてしまい、「生きることに対しても興味がない」ように思えてしまいます。
遊離型になってしまう方は、自分の置かれている状況が理解できず、今まで知っていた人が誰だかわからなくなり、目の前で起こっていることが何なのか・何のことなのかが分からずに、混乱した状態が続いていることに恐怖や不安を感じています。
そんなつらく不気味な現実から離れ、無関心・無関係であることで、自分自身を保とうとしていると考えられます。中には独り言をブツブツとつぶやいていたり、ひとりで笑ったりする言動が見られることもあります。
必要なのは「役割」
遊離型は、現実から遠く離れた人を現実に結びつけるケアが必要となり、「役割」を与えることが効果を発揮しています。
役割は現実世界の出来事となり、その作業を行っている間は遊離した状態ではなくなります。
この役割については、認知症の方の生活歴が参考になります。
女性で専業主婦や子育て経験があれば、危険のない台所仕事を促してみましょう。
・汚れた食器と洗剤のついたスポンジを持たせてみたら、何となく食器を洗っているような手つきになった
男性であれば、職業や趣味と関連した作業をさせてみると効果があるかもしれません。
・将棋が趣味で熱心に行っていた男性に、将棋盤と駒を用意すると、打ち始めた。
・農業を仕事としていた男性に家庭菜園に取り組んでもらったら、積極的に行うようになった。
これらの行動・変化は、遊離した状態から現実に戻っているサインとなります。
ヒントは「生活歴」
女性も男性も、生活歴が重要なポイントとなります。親の介護であれば、介護が必要となる前の生活を考え、役割を見いだしていくとよいでしょう。
現実に戻るきっかけがわかれば、毎日繰り返していくことで現実にいる時間が長くなり、最終的には遊離することがなくなります。
家族での対応が難しければ、介護保険サービスのデイサービスや一定期間施設に入所して同様のケアを実践してもらうのも良い方法です。
4つの基本ケアも同時に行う
遊離型は食事や水分が不足するため、低栄養や脱水状態の方もめずらしくありません。
現実に戻る実践的なケアも必要ですが、以下のことも同時に行うと回復が早まります。
- 1日1,500ml以上の水分摂取
- 1日1,500kcalの食事
- 便秘であれば解消(自然排便)
- 1日2km程度のウォーキング、あるいは30分程度の運動
この4つの基本ケアを粘り強く行っていきましょう。
水分を摂るのが難しいのであれば、一時的に経口補水液も取り入れましょう。
食事が必要量食べられないのであれば、栄養補助食品も活用しましょう。
まとめ
遊離型は現実世界があまりにもつらく混乱した状況なので、他人を拒絶して自分のなかに閉じこもっています。
そこに、「現実もそう悪くないよ」という心持ちで役割を与えて、焦らずにケアしていきましょう。