認知症の周辺症状は3つのタイプに分けられます。
①葛藤型:状況に対して強く反応する
興奮、暴言、暴力、徘徊、収集癖、異食
②遊離型:無反応、無関心
無感動、無為、無動
③回帰型:過去への回帰
昔の良かった時代へ戻る
今回は①の葛藤型について、原因と対処方法についてお伝えします。
※周辺症状とは
BPSD、行動・心理症状ともよばれ、不安な・うつ・不眠・幻覚・妄想などの心理症状や、徘徊、焦燥、攻撃性、介護への抵抗や拒否、異食などの行動的症状を指します。
この記事でわかること
- 「葛藤型」の原因がわかる
- 「葛藤型」の対処法がわかる
- 水分不足と便秘を解消するのも効果的
周辺症状の「葛藤型」とは
周辺症状の中でも葛藤型と呼ばれるタイプは状況に対して強い反応を示します。行動が外へ向くため、目が離せない状況になることもあり、介護者にとっては対応が難しい場面が増えていきます。
興奮を伴う粗暴な行動
介護に対して大声とともに強い拒否を示したり、拳を振り上げることもあります。介護を行う家族の目の前でそのような行動が現れると、恐怖を感じ困り果ててしまうでしょう。
このような症状は「抑制」がきっかけであることが多く、介護者の声掛けに原因が潜んでいます。
父親を介護する娘さんの声掛けを例として考えてみましょう。
- 時間がないから早く食べて
- 残さず食べて
- お風呂に入るので服を脱いで
- もう夜だから外に出ないで
- (デイサービスの)迎えが来るから、早く支度して
上記の声掛けをきっかけに、父親は強い拒否や怒りを示し、落ち着くまで時間を要していました。
父親にとっては娘さんが主導権を握り、受動的に動かされていると受け取ったと判断できます。これが「抑制」となるのです。
暴言や暴力の対処法
この場合は、相手(父親)に主導権があると思えるような声掛けが効果的です。
- そろそろ時間だけど、食べ終わりそう?
- 全部食べられそう?
- お風呂だけど、脱ぐのを手伝おうか?
- 夜で外が暗いから、出かけるのは明日にしたらどうですか?
- (デイサービスの)迎えが来るから、急いで準備できそう?
言葉尻は家族の関係で多少変わるでしょうが、このように相手(父親)にどのように行動するか選択をゆだねると、自分で決めたことに対して抵抗や拒否を示すことがなくなります。
収集癖や異食
認知症の人がゴミをやたらと拾ってきたり、トイレットペーパーやティッシュなど特定の物を集めたりする収集癖は、介護者を非常に悩ませる行為です。
さらに、集めてきたティッシュを口に入れたりするなど、食べられないものを口にしてしまう異食は危険を伴う場合もあり、目が離せなくなります。
収集癖や異食への対処法
これらの行為は「孤独」が原因であることが多く、対処法としては意識が外へ向かうような環境づくりが必要となります。
介護保険サービスを利用してデイサービスに行くなど、孤独感を感じない時間を徐々に増やしていくと解消する場合があります。ただし、認知症の方になると周囲が「仲間」として受け入れられない場合があり、逆に孤独感を強めてしまうこともあります。
環境設定がうまくいかない場合は、スローショッピングが効果を発揮します。
デパートやスーパー、コンビニ、商店街などに出かけて、ブラブラと商品を眺めながら歩くのです。
意識が外へ向かえばいいので、公園の花を眺めたり、子どもたちが遊ぶ様子を見ることでも良いかもしれません。
Memo
デイサービスによっては定期的にスローショッピングを行っているところもあります。認知症の方が興味深そうに商品やお店の人を見ている様子があれば、意識が外へ向かっているということです。
週1回~2回程度行っていくと、収集癖や異食がおさまってくるケースが多いので、試してみると良いでしょう。
孤独が原因で人を集めてしまうケースもあります。用もないのに呼び出したり、介護者から離れたがらなかったり、この場合も同様に孤独感を感じない環境や生活に変えていくと落ち着いていきます。
落ち着きがなくウロウロする・徘徊する
徘徊には3つの種類があります。
- 興奮を伴い、ウロウロと歩き回る
- 自分のいる場所がわからずオロオロと歩き回る
- 昔住んでいた所などに「帰る」と言って外へ出ていこうとする
徘徊への対処法
これらは認知力の低下から混乱状態となり、徘徊に至ります。よくあるのは介護者が徘徊する理由を聞き出したり、説得したりすることですが、その方法はあまり効果がありません。
認知力が低下している中での理由に意味はなく、説得しても理解はできません。
このような場合は認知力を上げるケアが必要となります。水分を十分に摂り、便秘であれば解消するのが最適な方法となります。
葛藤型は脱水や便秘に注意する
水分不足は認知力を低下させるため、認知症の方自身も不安が強くなり、葛藤型の症状が出やすくなります。便秘症状も交感神経を刺激することから、落ち着かない状態となっていきます。
必要な水分摂取と便秘にならないようにするだけで、葛藤型の周辺症状はかなり治まっていきます。
まとめ
認知症の周辺症状3つのタイプから、葛藤型の原因や対処方法をお伝えしました。
介護者からすると葛藤型の症状は対応が難しく、粗暴な行動や他者から見ると異常と思える言動を、抑制や説得で解決しがちです。
葛藤型には本人に選択させる言葉がけや孤独の解消、水分不足や便秘を解消することが症状解消の近道となります。介護のプロに頼りながら、これらの対処法を検討してみましょう。