仕事と介護 認知症ケア

「親の介護と仕事の両立」を難しくさせる認知症

2024年9月8日

仕事と介護を両立するだけでも大変なことですが、介護が必要な親が認知症を発症していると、さらに生活をコントロールできない状況に追い込まれやすくなります。

仕事中に親から何度も電話がかかってきたり、一人で外に出て迷子になり警察に保護されるなど、目が離せない状況になったら安心して働くことができません

今回は働きながら認知症介護をコントロールするための「3つの方法」をお伝えします。

この記事でわかること

  • 認知症介護の難しさ
  • 認知症介護をコントロールする方法
  • 仕事もレスパイト(休息)になる理由

仕事と認知症介護の両立は何が難しいか

親に介護が必要となったとき、身体機能の低下と認知症ではケアの難しさが変わってきます。

身体機能の低下で必要とされる介護の特徴

体力の低下や関節の痛み、病気などで体の機能が低下した場合の介護は、介護者が直接体に触れて行う介護が中心となります。

・体にまひや拘縮があるので、立ち座りや歩行を介助する
・足が弱って歩けないので、車いすで移動させる
・トイレでズボンの上げ下げを介助する

これらの介助は相手とコミュニケーションを取りながら行い、本人の意思や要望も確認できるので、何をすればいいのかが明確になっています。

認知症で必要とされる介護の特徴

認知症介護は行動させるために声掛けや介助が必要となります。

・食事への集中力がないため、声掛け(あるいは介助)で食べるよう促す
・排せつの順序がわからないので、促しや介助を行う
・デイサービスに行く日なので、身支度するよう何度も伝える必要がある

さらに、落ち着かない症状(周辺症状)が出現したときは、その行動をやめさせる・抑制するケアが必要です。

・外に出ると家が分からなくなるので、出ないように見守る必要がある(目が離せない)
・財布を盗まれたと怒り出し、大声を出すので、説得する
・何度も同じことを聞いてくるので、そのたびに答えて落ち着かせる

認知症の落ち着かない症状が強まると、本人の意思や要望が不明確となり、コミュニケーションがうまく取れなくなります。

不安の訴えや強い拒否・興奮状態など、どう対応すればよいのかわからない状態が長時間続くこともあり、介護者を精神的に疲弊させます。

仕事と認知症介護はアンマッチだらけ

介護者が働いている場合は、決まったスケジュールの中で行動しなければなりません。
しかし、認知症介護になると、いつ・何が起こるか予測がつかず、落ち着かない症状に対して、説得や抑制をしても解決できないことの方が多くなります。

つまり、介護者と認知症の方の行動がマッチしなくなり、仕事や介護をコントロールできなくなるのです。

認知症介護をコントロールする3つの方法

働きながら認知症の親を介護できるようにするには、次の3つを実践してみましょう。

コントロールする方法1地域包括支援センターと介護保険サービス

地域包括支援センター

介護をすることになったら、または、介護は始まっていないけど不安を感じたら、地域包括支援センターへ迷わず相談しましょう。認知症介護は家族だけの力ではどうにもなりません。
介護保険サービスが必要となれば、手続きからサービス利用までの支援もしてもらえる、心強い相談場所となります。

介護保険サービス

仕事で留守の間に不安があれば、介護保険サービスの出番です。
特にデイサービスは朝から夕方まで利用できる介護事業所が多く、仕事と認知症介護の両立には欠かせないサービスとなります。

場合によっては介護保険で利用できる範囲をすべてデイサービスにし、ほぼ毎日通われる方もいます。

Memo

デイサービス(通所介護)とは

日帰りの施設で機能訓練・入浴・昼食・レクリエーションなどを提供しています。
自宅~施設まで車で送迎してくれるので、利用する高齢者・介護者ともに負担なく利用できるサービスです。
※提供時間は午前中・午後のみや、朝から夕方までなど、介護事業所によって異なります。

こちらの記事もチェック!

コントロールする方法2仕事もレスパイトになる

介護者が介護から離れ、休息をとることを「レスパイト」といいます。
認知症介護は落ち着かない症状(周辺症状)が続くと精神的な負荷を受けやすく、心身ともに疲弊することから、レスパイトの期間を設けることは非常に重要です。

デイサービスやショートステイは実際に介護から離れる時間が作れるので、レスパイトに適したサービスとなります。計画的に、積極的に利用できるようにケアマネジャーに相談しましょう。

Memo

ショートステイ(短期入所生活介護)

介護施設に最短1日から宿泊でき、必要な介護や生活支援が受けられます。

そして、介護から離れるという意味では、仕事もレスパイトと言えます。
時間的にも物理的にも強制的に介護から離れる時間が作られ、仕事という作業に思考を切り替えることができます。

さらに、仕事は大切な収入源になりますし、人によっては自己実現を果たす手段となります。働き続けるためにも、定期的にレスパイトの期間を確保し、心身ともに休める時間を確保していきましょう。

注意

テレワークであれば仕事と認知症介護の両立ができると考えがちですが、それはNGとなります。
介護者が介護に関わる時間が長くなるほど、心身の疲労から介護離職に陥りやすくなります。

介護離職を防ぐためには「直接介護を行う時間を最小限にする」必要があります。

コントロールする方法3認知症の症状を改善できるケアをしてもらう

例えば高血圧の治療であれば、塩分・運動・禁煙などに関してエビデンスに基づく生活指導が確立されています。認知症も同じように、「水分・食事・排便・運動」を生理的に捉えたケア方法が確立されています。

このケア方法は認知症の落ち着かない症状(周辺症状)を改善し、介護負担を軽減する効果があります。
ただ、残念なことに介護業界全体には広がっていないケア手法で、一部の介護事業所(施設)だけで実践されています。

地域に「水分・食事・排便・運動」を基本とした自立支援介護を実践している介護事業所があれば利用することをおすすめします。実践している介護事業所についてはケアマネジャーに聞いてみましょう。ケアマネジャーが自立支援介護に詳しくない場合は、インターネットで調べるか、地域包括支援センターにも相談してみましょう。

自立支援介護を実践している所がない地域は、利用している介護事業所に要望を出す必要があります。

要望はこの2つ(デイサービスの場合)】
・水分を多く取らせてほしい
(6時間程度のデイサービスであれば、通所中に800~1,000ml)
・歩行を中心に、体を動かす機会を多くしてほしい
※水分や運動に制限のある方は、医師の指示に従ってください

その他のサービスでも、ケア中に水分を多く摂るように要望を伝えましょう。

水分摂取と運動のケアを実践してもらえれば、体調が安定し、認知症の症状も軽減してくる可能性が高まります。

認知症の症状改善で介護負担はさらに軽減する

介護保険サービスを活用して仕事とのバランスをとっていくのも必要ですが、「水分・食事・排便・運動」のケアを在宅でも実践できれば、介護負担がさらに軽減し、両立が容易となります。

  • 1日1,500ml以上の水分を摂る
  • 1日1,500kcalの食事を摂る
  • 便秘にならない
  • 1日2km程度のウォーキング、または30分程度の運動

便秘についてはなるべく下剤に頼らず、野菜や寒天、粉末のファイバーなどを積極的に摂り、自然排便を目指しましょう。

こちらの記事もおすすめ!

まとめ

仕事と認知症介護の両立は難しいように感じますが、ポイントを押さえてしまえばコントロールしやすくなります。


介護者が直接介護を行う時間が長ければ長いほど、介護のために仕事を辞める可能性も高まるため、「介護から距離を保つ」ことを念頭に、計画を立てていきましょう。

-仕事と介護, 認知症ケア
-, , ,