便秘のケア 認知症ケア

認知症で怒りっぽいのは便秘が原因?|スッキリ便で落ち着く理由

認知症の介護で、こんなとはありませんか?

  • 突然怒り出し、落ち着きがなくなる
  • 週に数回、ひどく怒ることがある
  • 怒り出すとなかなか収まらない

認知症の方で落ち着かない症状が数日おきにある、あるいは激しく怒りだしてなかなか治まらない場合は、便秘が関係しているかもしれません。

この記事でわかること

  • 便秘が認知症に及ぼす影響
  • 大腸と直腸のしくみ
  • スッキリ便になる方法

便秘が原因で認知症が悪化した例

こんなことがありました。

デイサービスに通う認知症のAさんは、朝からとてもイライラしていました。座ってもすぐに立ち上がり、家に帰りたいと言って出口へ向かいます。介護スタッフが引き止めると大きな声で威嚇し、拳を振り上げます。

しばらくしてからAさんはトイレに行き、長時間出てきませんでした。どうやら便が出なくて力んでいる様子です。
そこで介護スタッフは冷えたお水や経口補水ゼリー、麦茶などを摂ってもらうケアを行いました。

昼食後に大量の排便があり、Aさんは人が変わったように笑顔で上機嫌となり、落ち着きを取り戻しました。

なぜ便秘が認知症に影響を及ぼすのか

Aさんの怒りっぽくなる原因は便秘でした。家族に聞くと、普段から割と便秘がちなようです。
怒りっぽい症状が出てくるのも毎日ではなく、3・4日おきにあるようなので、便秘と関係していると考えられます。

大腸・直腸の働きと認知症の関係

便秘と認知症の関係は、大腸と直腸の働きを知ることで理解できます。

  • 大腸

胃が収縮活動と消化液で食べたものをドロドロにし、十二指腸と小腸で栄養を吸収し、大腸を経由して便となって排せつされます(約24~72時間かかります)。

大人の大腸は約1.5~2メートルの長さで、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸で形成されています。これらを通過しながら水分が体に吸収され、便を固形にしていきます。

  • 直腸

固形化された便はすぐに排せつされず、S字結腸でしばらく待機します。
食事や水分摂取が刺激となり強い蠕動(ぜんとう)運動が生じ、便は直腸に移動していきます。
便によって直腸壁が伸展し腸内圧が上昇することで排便中枢に刺激が伝わり、便意を意識します。

※蠕動運動 
腸が伸びたり縮んだりを繰り返すこと

直腸に便がとどまると興奮状態に

便が大腸を移動するときに水分を体に吸収していきますが、体内の水分が不足していると便に含まれる水分も減少していきます。そのため、硬い便となり直腸内にとどまってしまうことで不快感が続いてしまいます。

自律神経が乱れ興奮状態となることから、認知症であればイライラや怒りっぽさが強まり、落ち着かない状態となっていきます。

スッキリ便を目指す5つのポイント

認知症の人は便秘の影響をとても受けやすいため、定期的な排便は欠かせないこととなります。
便秘を解消する、あるいは便秘にならないポイントをまとめてみました。

ポイント1食物繊維を十分に摂る

食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類があります。

水溶性食物繊維・・・水に溶けやすく、便を柔らかくして排せつを促し、善玉菌を増やします。
不溶性食物繊維・・・水に溶けにくく、便の量を増やし、大腸の蠕動運動を促します。

腸内環境を整えるヨーグルトなどの乳酸菌や、納豆などの発酵食品、オリゴ糖なども便秘を改善してくれます。

Memo

食物繊維の割合は「水溶性食物繊維:不溶性食物繊維=1:2」で摂るのが理想です。

ポイント2適度な運動は便意を促す

便秘を解消するために欠かせないのが「起立大腸反射」です。立ったり歩いたりすることで大腸が刺激され、動きが活発になる反射のことです。
便秘にならないための運動は歩くだけでも十分で、大腸の動きを良くする効果があります。

ポイント3歯の治療と普通食

歯に不具合があると食物繊維が豊富な野菜や海藻などが食べられなくなります。さらに、お粥など食事が柔らかくなればなるほど水分が増え、食べ物の素材が少なくなることで栄養やカロリーが不足し、低栄養状態となる危険が高まります。

歯が悪いと、便秘だけでなく噛む力や体力など全身に影響するため、必要があれば歯科治療を受けましょう。

ポイント4下剤に頼りすぎない

下剤を服用することで逆に、排便のコントロールがうまくいかないことがあります。

  • 夜中に排便があるなど、リズムが不安定になる
  • 毎日服用しても排便は数日に1回程度でスッキリ出ない
  • 急に強い腹痛を感じ、思わぬタイミングで大量の排便がある
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ポイント5欠かせない水分

水分と便秘の関係で知っておきたいのが「胃・大腸反射」です。
胃に冷えた水や牛乳・食べ物が入ることで刺激を受け、大腸の働きを活発にする反射です。
この反射は胃が空っぽのときほど起こりやすく、特に朝食後の排便を促しやすくしてくれます。

適度にやわらかい便であるために、必要量の水分摂取を毎日欠かさないことも便秘解消・予防には大切なこととなります。

Memo

下剤は便に多くの水分を含ませて、便を大きくしたり柔らかくします。
やむなく下剤を服用する場合は、多量の水分とともに摂るようにしましょう。

まとめ

数日おきに落ち着かない症状が悪化するようであれば、排便の記録をしばらく続けると良いかもしれません。排便のタイミングと認知症の症状が悪化する時期が重なるのであれば、便秘が影響していると考えられます。

便秘は認知症の症状を悪化させ、本人に強い苦痛をもたらします。介護を行う家族も振り回されてしまい、お互いがつらい思いをします。
便秘になったら早めに解消し、定期的な自然排便となるようにケアしていきましょう。

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