介護うつは、介護者がストレスや疲れからうつ病を発症する状態を指します。
身内などの介護で肉体的・精神的な疲労が蓄積され、介護はもちろんのこと、仕事や家庭生活にも影響を及ぼします。
そんな介護うつは、うつ病の中でも比較的改善や回避できる可能性が高いと言われています。
今回は「介護うつ」の症状や原因、治療方法などを処方していきます。
この記事でわかること
- 介護うつの症状や原因
- 介護うつのセルフチェック
- 介護うつの治療法や回避策
分かりやすく処方しますね。
処方箋1介護うつの主な症状
介護うつの症状は自覚症状がないまま進行することが多く、周囲も察知することが難しいため、気が付かない間に悪化してしまいます。
介護うつの原因は主に3つ
介護うつに対して「気持ちの持ちようだ」と言われることがありますが、そんな単純なものではありません。
介護うつは主に3つの原因があり、複雑に重なることで問題はますます深刻化していきます。
- 精神的負担: 長期間の介護によるストレスや感情的な負担が原因となります。
- 経済的負担: 介護に伴う経済的な負担がストレスを引き起こすことがあります。
- 肉体的負担: 介護には体力を必要とするため、身体的な疲労が原因となることもあります。
介護うつの主な症状
介護うつの症状はどのようなものでしょうか。
【食欲不振】
食べたくない、食べられない状態になり、体重が減少します。
【睡眠障害】
疲れているのに眠れない、何度も目が覚めるなどの症状が現れ、不眠症になります。
【疲労感】
体が疲れやすく、倦怠感や無気力が生じます。
【焦燥感】
原因不明の焦りや不安な気持ちが現れ、神経質になります。
【思考障害】
気分が落ち込み、注意力が低下し、ネガティブな思考が進むこともあります。
これらの症状が2週間以上続く場合、うつ病を発症している可能性が高いため、早めに対応することをおすすめします。
処方箋2介護うつになりやすい人の特徴
介護による負担やストレスのインパクトが大きいほど、心と体に与える影響は大きくなります。
以下は介護うつを引き起こしやすい人の特徴です。ご自身に当てはまる項目があるでしょうか。
責任感が強い人
無意識のうちに「他人には頼らない」という考えを持ちやすい人で、自分がつらい状況でも他人に頼れない傾向があります。一人で乗り切ろうとするため、疲労がたまりやすくなります。
完璧を求めてしまう人
介護を優先して頑張りすぎ、ストレスをため込みやすくなります。できない自分を責めてしまい、落ち込むことが多い傾向にあります。
精神的に負担を抱えやすい人
介護は長期化し、不安や孤独を感じることがあります。認知症の方を介護する場合、虚しさに襲われることもあります。
経済的負担
生活が困窮していくと「お金がかかるため、介護はすべて自分が背負う」と判断してしまいます。介護以外の物事に対しても悲観的に考えがちになります。
肉体的負担
介護は重労働で、体力が必要です。過労によって体調が優れず、うつ病を引き起こす可能性もあります。
心身ともに不調なことが多い
介護以外のことで悩みがある、自身の健康面で不安を抱えている場合は、少ない介護負担でも介護うつに陥る可能性が高まります。
身近に頼れる人がいない
身近に頼れる人がいないと、精神的な負担が増加し、介護うつになりやすくなります。
処方箋3介護うつの治療法は3種類
- 薬を使った治療
- 精神療法
- 休養(レスパイト)
1.薬を使った治療
抗うつ薬を主に使用します。これらの薬は神経伝達の異常を整え、うつ病の症状を軽減する役割を果たします。
副作用を抑えるために少量から服用し始め、徐々に適量へ調整していきます。効果が出るまで2~3週間ほどかかるため、自己判断で服用をやめたりせず、焦らずに効果を見ていく必要があります。
2.精神療法
専門医によるカウンセリングなどで原因を探り、感情や気分に影響している「ものの見方・考え方」を客観的に整理し、柔軟でバランスの良い考え方に変えていきます。
3.休養(レスパイト)
介護から離れ、疲れた心身を回復させるためにしっかりと休みます。
介護うつの治療には休養が欠かせず、誰に迷惑をかけようとも、休むことが治療の基本となります。
介護保険サービスを利用することで介護から離れることもできます。
人によっては短期間でも入院した方が良い場合もあるため、ケアマネージャーなどに相談しましょう。
治療は組み合わせで行う
3種類の治療はどれか1つではなく、組み合わせて行われます。
薬を服用しても介護を休む期間がないと、回復から遠ざかりますし、精神療法をしていても薬の力が必要なこともあります。
担当医とよく相談して、治療を継続していきましょう。
処方箋4介護うつ・5つの回避方法
介護うつは回避できる可能性が高く、そのためには一人で解決しようとしないことが大切となります。
回避方法1:介護保険サービスを利用する
介護うつを回避するためには、介護保険サービスの利用が必須となります。
介護はプロに任せ、家族は最小限の介護で済むようにプランを組み立てていきます。
介護保険サービスは介護者が介護から離れるために利用することもでき、それを「レスパイト」と言います。レスパイトとしてよく活用されるサービスは2つあります。
【デイサービス】
通いで介護サービスを提供する施設で、機能訓練や食事・入浴・介護などのサービスを提供しています。
【ショートステイ】
介護施設に1日~30日まで宿泊でき、食事・入浴・介護などのサービスを受けることができます。
気持ちが元気であっても、計画的に介護から離れる時間を作ることも、介護うつの回避策となります。
回避方法2:介護の協力者を増やす
介護は関わる人が多いほど楽になります。家族や兄弟姉妹、親戚などに理解を求め、介護負担を分担していきましょう。
そのためには情報を共有していくことが大切になります。コミュニケーションアプリなどを利用して、情報共有を欠かさず行えるようにしていきましょう。
遠方に住み、介護に関わることができない場合は、金銭面で援助してもらうのも良い方法です。
回避方法3:相談できる人をつくる
介護の悩みや不安を第三者に話すことは思った以上に必要です。ケアマネジャーや地域包括支援センターはもちろんのこと、家族や友人でも良いでしょう。ときには愚痴ることも必要で、自分の気持ちを正直に話せる相手であれば思いっきり話してみましょう。
各市区町村の介護保険課・福祉課では介護相談や勉強会を開催しているところもあります。積極的に活用していきましょう。
介護の悩みは家族問題を含んでいることも少なくありません。身近な人に話しにくいようであれば、有料のカウンセリングを利用するのも良いかもしれません。その場合はカウンセラーに対して「話しやすい」か、説明が「分かりやすい」か、「相性が良い」かを見極めながら利用しましょう。
Memo
第三者に相談するときに、相手から過剰なアドバイスや個人的な意見で「自分自身が傷ついてしまう」場合もあります。そんなときは、距離を置くようにしましょう。
回避方法4:介護を自分でマネジメントする発想を持つ
介護のある生活を、自分主体でマネジメントする意識を持つと、介護をコントロールできるようになってきます。
自分自身の家庭や仕事、友人との時間や趣味の時間を大切にしながら、自分のできる範囲の介護を考えます。
自分ができない介護についてはケアマネジャーに相談し、介護保険サービスや自費サービスを組み合わせて活用していきましょう。
回避方法5:自分のストレスを自覚する
体のだるさや倦怠感、気持ちが沈んでいると感じたときは「ストレスがたまっている」と自覚しましょう。
自分の気持ちや体調を気遣い、自分自身を大切に思うようにします。
持病などがあれば定期通院を欠かさず、健康でいられるように自分をケアしていきましょう。
まとめ
介護うつは誰にでも起こる可能性があります。多くの人が介護にストレスを感じており、一部の人は自覚せずに限界まで頑張ってしまうことで追い込まれてしまいます。
介護者が心身ともに良い状態で介護を継続できるよう、介護は介護保険サービスを使うなどして負担を軽減していきましょう。
自分自身の人生を第一に考えてこそ、介護を受ける側の生活をサポートすることができるのです。