仕事と介護を両立するとき、あまりにもタスクが多くて混乱するのではないでしょうか。
特に親に介護が必要と判明し、実際に介護サービスを導入するまでの間は忙しく、親を含めた介護のマネジメントに頭を悩ますことでしょう。
今回の記事では、働きながら親の介護を担うビジネスケアラーが意識したい「両立に役立つ4つのフェーズ」について解説します。
フェーズ1 介護を要する状況が発覚(混乱期)
介護が始まり、一度にいろいろな問題が生じて混乱する時期です。仕事で毎日忙しい生活を送っているのに、その上に介護が加わると、何から手をつければいいのかわらなくなります。
フェーズ1介護に関わる必要な手続きなど
- 全体的な状況の把握
- 親の住まいにある地域包括支援センターを調べ、相談に行く
- 要介護(要支援)認定の申請を行う
- 必要度に応じてケアマネジャーを決める
まずは冷静に状況を確認しましょう。親がどのような状態なのか、何に困っているのか、どのような手助けが必要なのか情報を収集します。
同時に地域包括支援センターの場所・連絡先を調べ、アポイントメントを取ってから相談に行きましょう。緊急性がある場合は、その日、もしくは数日以内に担当職員が親の住居を訪問してくれます。
その後の要介護(要支援)認定の申請やケアマネジャーの選定については、地域包括支援センターの職員からアドバイスを受けながら進めていきます。
Memo
最初に行うべきことは、「相談」です。地域包括支援センターに連絡を取り、状況を説明し、その上で最優先なタスクが何かを確認します。
フェーズ1勤め先へ伝えること
- 勤務先の相談先を調べる(人事部、直属の上司など)
- 勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を確認する
- 介護が始まったことを伝える
- 伝えられる範囲で状況を伝える
国は介護のために仕事を辞める「介護離職」を防ぐために、介護休暇や介護休業などの制度を定めています。勤務先でこれらの制度がどのように位置づけられているのか、相談窓口があるのかを確認しましょう。
そして、誰に相談すべきかを見極めてから介護が始まったことを伝えます。その場合、詳細を全て伝える必要はありません。話せる範囲で十分です。
Memo
企業によっては「仕事と介護の両立支援制度」として、法律以上に制度を設けているケースもあります。
逆に国が定めた制度の利用が難しい状況であれば、外部の窓口に相談しましょう。
外部の相談窓口:都道府県労働局雇用環境・均等部(室)
フェーズ1必要な仕事の調整
- 当面の働き方や休暇取得をわかる範囲で計画する
- 介護休業や介護休暇の届け出をする
- 仕事上、どのようなフォローが必要かを明確にする
介護が始まったばかりなので先の見通しが立たず、どの程度仕事に影響するかも見えてきません。今週は、来週はと短いスパンで考え、仕事を調整していきましょう。
フェーズ1必要な休みの期間
- 地域包括支援センターへ相談(半日~1日)
- 要介護(要支援)認定の申請手続き(半日)
- 認定調査同席(半日:認定のために行う訪問調査です)
重要なのは、介護のために仕事を休みすぎないということです。要介護(要支援)認定の申請で手続きや調査が入りますが、それほど多くの時間は必要ありません。
遠距離で短い日程しか仕事を休めない場合は、先に地域包括支援センターに伝え、スケジューリングの協力をお願いしましょう。
Memo
長期間仕事を休んで介護に専念しないようにしましょう。家族が直接介護をしてしまうと、介護を受ける側はそれが当たり前になり、依存してしまう場合があります。そうなると、本格的に介護サービスを導入しても拒否されてしまい、家族の介護しか受け入れない状況になってしまいます。
フェーズ2 生活の変化に適応していく(負担期)
ケアマネージャーからケアプランを提示され、同意した後に介護サービスの利用が始まります。
フェーズ2介護に関わる必要な手続きなど
- 介護サービスの選定する
- ケアマネジャーにからケアプラン(居宅サービス計画書)を提示される
どのような介護サービスが必要なのかをケアマネジャーと相談しながら決めます。この時点で働いていること・働き続けたいことをしっかりと伝えておきましょう。
フェーズ2勤め先に伝えること
- 介護状況など、わかる範囲での先の見通し
- 今後必要な休暇などについて
- これからの働き方の希望・要望
介護サービスの利用が始まると、先の見通しが立ってくるように思えますが、親がサービスを拒否することで予定通りに事が進まない可能性もあります。その場合はフェーズ1と同様、今週・来週と短いスパンで予定を立てていきます。
介護サービスの利用が安定した場合、長期的な働き方や介護休業法などの利用方法について話し合いを進めていきましょう。
フェーズ2必要な仕事の調整
- 職場に迷惑をかけないために、仕事を抱え込まない
介護サービスの利用はまだ流動的で、定着するまでは早退や遅刻する場面があるかもしれません。この時期に自分にしかできない仕事を増やすのでなく、「業務をシェアする」考えに切り替えて役割分担を見直していきましょう。
フェーズ2必要な休みの期間
- ケアマネジャー初回面談(半日~1日)
- デイサービスなどの見学(半日~1日)
- サービス担当者会議(半日~1日:介護サービス事業所の担当者が集まり、利用に伴う詳細を確認します)
- 介護サービスの利用拒否により、急遽の帰宅対応など(2週間程度)
問題なのは親が介護サービスを拒否した場合です。新しい環境に順応できないなど、親にしてみれば当然の動揺ですが、子供にとっては予定が立たず、焦りや怒りが湧いてくるかもしれません。
しかし、このような状況は長く続かず、次第にサービスの受け入れが良くなってきます。
Memo
介護でよくあるのが、子供が親に強い口調で説得するという力関係の逆転現象です。親としては心が傷つき、その反動でますます拒否や不満が前面に出てくることがあります。説得が必要な場合は、ケアマネジャーや介護の専門職に任せるのが最善の方法です。
フェーズ3 介護のある生活が安定(安定維持期)
介護サービスの利用が安定し、仕事に集中できる余裕が生まれます。生活がパターン化し、何かあっても冷静に対応できるようになります。
フェーズ3介護に関わる手続きなど
- 定期的な要介護(要支援)認定の更新手続き(認定調査やサービス担当者会議がその都度行われる)
- 状態が変化したら、新しい介護サービスの追加や回数の増減をケアマネジャーと相談する
要介護(要支援)認定には期限があり、その期限が迫る前に更新の手続きを行います。手続きはケアマネージャーが代行してくれることがほとんどで、遠距離や仕事の都合がつかない場合には、認定調査にも立ち会ってくれることがあります。
安定している状態であっても親は年齢を重ねていくので、その時の状態に合わせて介護サービスの追加や利用回数の見直しを行います。
フェーズ3勤め先に伝えること
- 定期的に介護状況を報告
- 仕事と介護を両立できるよう調整・相談を継続
定期的に介護状況を報告し、仕事と介護が両立できるよう調整や相談を続けていきます。
フェーズ3必要な仕事の調整
- 突発的なことがあれば、仕事を調整していく
構築できた仕事と介護の体制が安定してくると、親の状況が変化した際にも落ち着いて判断や行動ができるようになります。
この時期は心に余裕ができるので、同じ職場で介護を始めた人がいれば、自身の経験も踏まえて話をするなど、周囲に良い影響を与えることができます。
フェーズ3必要な休みの期間
- 要介護(要支援)認定更新のための再調査(半日)
- サービス担当者会議(半日:介護サービスの追加や認定の更新時に行います)
- 施設見学・入居調整(各2~3日)
介護施設への入居を検討している場合は、この時期に行動するのがおすすめです。介護施設は慌てて決めてしまうとミスマッチが生じやすいので、介護状況が安定し、気持ちに余裕があるときに見学などを行いましょう。
フェーズ4 介護の終わり(終末期・看取り期)
医療行為がある場合は「終末期医療」、医療行為を行わずに身体的・精神的苦痛を和らげるケアを目的としたものが「看取り」です。
フェーズ4介護に関わる手続きなど
- 必要に応じて要介護認定を見直す
医療系の介護サービスが増えることから、要介護度を上げるために要介護認定の見直し申請(区分変更)を行うことがあります。
家で看取る場合は訪問看護や訪問入浴など、在宅で受けるサービスが主となります。
フェーズ4勤め先に伝えること
- 看取りの時期になったことを伝える
この時期をどう過ごすかは人によって違いますが、家族との時間を優先し長期休暇を取りたいのであれば、その希望を伝えましょう。すぐに駆け付けられる場所に親がいるのであれば、急な知らせの際に行かれる体制にしたいことも伝えていきます。
フェーズ4必要な仕事の調整
- 長期休みが取れるよう仕事を調整する
介護のために初めて長期的な休みを取ることになります。可能であれば、フェーズ3の時期に長期休暇を想定しながら業務を整理し、進めるとよいかもしれません。
フェーズ4必要な休みの期間
- 親の看取り状況により、必要な休暇の期間が変わってきます。
介護休業などの制度を利用して、休暇を取っていきましょう。気持ちの整理も必要なので、体や心を休めるための時間も確保しましょう。
まとめ
勤め先に相談せずに仕事と介護を両立するのは難しいということを理解し、仕事や介護をマネジメントしてていきましょう。
親の介護で陥りやすいのが、介護サービスを積極的に利用せず、子供自身が全ての介護を抱えてしまうケースです。介護から抜け出せずに長期休暇を取り、職場復帰が難しくなってしまうと、介護離職を余儀なくされます。
介護は家族だけでなく、「介護サービスをアウトソーシングする」という考え方を持ち、より良い両立を目指しましょう。