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高齢者が歩けなくなったら|効果的な歩行訓練

2024年6月18日

こんな思い込みはありませんか?

  • 歩き方を忘れるなんてことはない
  • 高齢者が歩けなくなったら、良くはならない
  • 高齢になって歩けなくなるのは仕方ないと思う

肺炎などで高齢者が一時的に寝込んでしまい、その後歩けなくなることがあります。
一般的に家族や介護関係者は「足が弱ったため」「筋力が低下したため」と結論付けますが、実は「歩き方を忘れた」という場合も少なくありません。

「歩き方を忘れることがあるの?」と思うかもしれませんが、高齢になり寝たきりなどの期間があると、脳は体の使い方を忘れてしまうことがあります。

この記事でわかること

  • なぜ歩き方を忘れるのか
  • 歩き方を思い出すと、再び歩けるようになる
  • 歩き方を忘れない方法

脳が歩き方を忘れるメカニズム

脳が歩き方を忘れるとは、どういうことでしょうか?
スポーツを例にして考えてみましょう。

スポーツは繰り返し練習して上達する

野球でもサッカーでも「何度も練習しよう」とよく言われます。この「何度も」というのは、反復練習のことです。
何度も「同じ動作」を繰り返すことで、『脳』から手や足の『運動器官』に伝達されるシグナルがスムーズになっていきます。さらに、何度も繰り返し行う動作は、少ない思考でも動ける状態になっていきます。

しかし、この反復練習をやめてしまうと、その動作は下手になっていきます。それはピアノやダンスも同様で、ブランクが長ければ長いほど「脳」は体をどう動かしていたかを忘れ、動きがぎこちなくなっていくのです。

しばらく歩いていないと「歩き方を忘れ」てしまう

歩行動作も、成長の過程で何度も失敗を繰り返しながら習得した動作です。
「歩く」ためには手を振って、足を動かし、多くの筋肉を協調させて全身をコントロールする必要があります。視覚や聴覚から得られる情報と足裏の感覚、体の傾きなどを瞬時に判断し、スピードや方向を調整して全身のバランスを調整しています。

しかし、何かしらの事情でしばらく寝たきりになると、スポーツと同様に『脳』は歩き方を忘れてしまうのです。

歩き方を忘れたならば、思い出せばいい

ピアノの指使いを忘れたのであれば、再び反復練習することで上達していくでしょう。キャッチボールも過去の経験があれば、練習を重ねることで脳がフォームを思い出し、スピードやコントロールが向上します。

歩く動作も思い出せる

歩き方を忘れたのなら、歩く反復練習をすることで再び歩けるようになります。何年も車いすで生活していても、繰り返し歩く練習をすることで「歩き方を思い出す」可能性が高まっていくのです。

人の体は繰り返し動かしていれば滑らかに動くようになり、動かさなければその動作は硬くぎこちなくなっていきます。歩く動作も、反復運動を積み重ねていけば再び上達していく動作なのです。

歩き方を思い出す方法

歩き方を忘れた場合、効果的に思い出すにはどうすればよいのでしょうか。
さらに、歩き方をいつまでも忘れずにいるためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

歩き方を思い出す3つのポイント

歩行の再獲得には、いくつかのポイントがあります。

  • ポイント1:実際に歩くこと

よく、歩行訓練として足首に重りをつけ、膝を屈伸するような運動を筋力強化として行いますが、最も効果的な運動は「実際に歩く」ことです。
立って自身の体重を両足で支えることにより負荷がかかり、さらにバランスを取ろうとして全身を使うため、効果が期待できます。

  • ポイント2:反復練習をすること

脳が体の使い方を思い出し、再度記憶するように繰り返し歩行練習をしましょう。家の中でもトイレに行くとき、居間や食卓へ移動するときなど、こまめに歩く機会を作ると効果的です。

  • ポイント3:練習量を増やすこと

歩く機会を増やし、歩行距離を伸ばしましょう。
歩行距離が長くなると体力がつき、持久力もアップします。

歩行練習で注意すること

長期間歩いていない、また体に拘縮や痛みがある場合は、急に一人で歩かせるとけがなどの危険が高まります。二人の介護者が両脇から支える、あるいは適した歩行器を用意するなど、安全に歩行訓練ができる環境が必要となります。積極的に介護保険サービスなどを利用して「介護のプロ」に支援してもらいましょう。

最近では、「歩く」能力を取り戻したり、歩ける状態を維持することに力を入れているデイサービスなどが増えています。
専門職を頼ることで、歩行の再獲得につなげていきましょう。

歩くことは認知症にも関係する

「歩行」を中心とした運動を週4日以上行うと、認知症の症状にも良い影響をもたらします。歩くことで脳や感覚が刺激され、全身の血流も良くなります。

体力や筋力が向上し、さらに食欲増進や便秘解消、睡眠の質が向上するなど、認知症の不穏な症状(周辺症状)を悪化させない効果がたくさんあります。

まとめ

在宅で寝たきりや車いす生活の方でも、再び歩ける可能性のある高齢者が多く存在しています。
介護保険サービスを利用することで、体に合った福祉用具の活用や、安全な環境下での歩行練習を行うことが可能となります。

「高齢だから仕方ない」「長く歩いてないから無理」と思い込まず、諦めずに介護のプロを頼り、再び歩けるよう訓練を進めましょう。

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