介護に関わるようになると、いつの間にかストレスを抱え込んでしまうことがあります。
特に内面的なストレスは自覚しにくく、心身に影響を及ぼすこともあります。
この記事でわかること
- 介護のストレスとは何か
- ストレスから生じる症状
- 5つのストレス対処法
介護ストレスの原因
介護によるストレスは大きく3つの原因に分けられます。
- 精神的な疲労
- 肉体的な疲労
- 経済的な困窮
これらの原因は一つとは限らず、複雑に交錯している場合が多くあります。
介護で生じるストレス精神的な疲労
介護者の精神的な疲労は、さまざまな理由によって生じます。
- 介護対象者の健康状態の変化
- 時間の制約
- 孤立感
- 意思疎通の困難さ
- 家族の協力不足
- 家庭の不和
- 未来の見通しの不確実性(介護は終わりが見えない)
働き方や職場のポジションを変えなければならず、孤立感を覚えてしまうかもしれません。
周囲の人から介護に対する理解が得られず、悩むこともあるかもしれません。
介護が始まることで友人や親しい人と過ごす時間や、自分の家族との時間、自分のための時間が極端に減ってしまうことも少なくありません。
介護で生じるストレス肉体的な疲労
介護は肉体的な疲労も多くなってきます。
- 身体的な介助の負担
- 睡眠不足
- 家事負担の増加
仕事であれば休日に体を休めることができますが、在宅介護は24時間365日休みがありません。疲労が蓄積することで腰痛やひざ痛が生じるなど、健康に影響が出ることも考えられます。
介護で生じるストレス経済的な困窮
介護により経済的な負担が増す場合があります。
- 介護に必要な備品に費用がかかる
- 介護施設入居の費用が高額
- 介護のために仕事を辞めてしまう(介護離職)
介護を受ける高齢者の年金や貯蓄で必要な費用がまかなえれば良いのですが、不十分な場合は子供が負担する必要があるかもしれません。
介護者が介護のために仕事を辞めてしまうと、常に経済的な悩みを抱えてしまう可能性も高まります。
ストレス反応を見逃さないで!
長時間ストレスを受けたり、一時的にでも強い介護負担がかかると、私たちの心身にさまざまなサインが現れます。このサインは体の弱い部分に出やすく、見逃したり放置していると深刻な事態を引き起こします。
心理的なストレス反応
不安、イライラ、落ち込み、恐怖、怒り、罪悪感、緊張、孤独感、疎外感、感情鈍麻、無気力など
集中困難、思考力の低下、短期記憶の喪失、判断・決断力の低下など
行動的なストレス反応
攻撃的な行動(怒りの爆発、ケンカなど)
極端な行動(過食・虚飾、泣く、引きこもり)
ストレス場面からの回避行動など
身体的な反応
動悸(どうき)、頭痛、腰痛、胃痛、嘔吐、下痢、便秘、めまい、睡眠障害など
介護をするようになると、自分のことは二の次となりがちです。日々の負担が蓄積し、不安やストレスが大きくなると、「介護うつ」を発症するリスクも高まります。
5つの介護ストレス対処法
大切なのは、解決できるところから始めていくことです。5つの対処法をご紹介しますので、参考にしてみてください。
対処法1:公的介護サービスを利用する
介護保険サービスをフル活用し、介護者が直接介護する必要のない時間を作りましょう。
自宅へ訪問してくれるホームヘルパーや、日帰りで施設サービスを利用できるデイサービスなどを利用すると、介護者の肉体的疲労は軽減されていきます。
また、レスパイトケア(介護を休むために利用する介護サービス)として短期間宿泊できる介護施設の利用もおすすめです。
対処法2:協力者を増やす
介護は一人では抱えきれません。物理的な協力者はもちろんのこと、精神的に支えてくれる人も必要です。
地域包括支援センターやケアマネージャーは多くの在宅介護を支援してきた経験から、精神的な支えにも理解を示し、具体的な解決策を一緒に考えてくれます。高齢者支援サービスにも知識が深いため、経済的な相談にも応じてくれます。
また、かかりつけの医師や友人に介護経験者がいれば相談するのもよいでしょう。
自分自身の家族にも協力を依頼したり、介護の分担を提案してみましょう。
兄弟姉妹が介護に協力できない場合は、金銭的な援助で支えてもらうのも有効な手段となります。
※ケアマネジャーとは要介護・要支援認定を受けた人のケアマネジメントを行う介護のスペシャリストのこと。
対処法3:介護に関する悩みや不安を分かち合う
在宅で介護している方が悩みや不安を話したり、情報交換をする「介護者の会」(名称は地域によって異なる場合があります)が自治体主導で行われていたり、介護サービス事業所が開催していたりします。介護者同士が集まって話をすることは、ピアカウンセリング(同じ境遇や体験をした当事者同士が、共感によって心が軽くなる)の効果があります。
対処法4:介護保険外サービス(自費)の活用
介護保険で利用できるサービスは限定的な面があるため、公的なサービスだけでは不十分かもしれません。
そのようなときは、自費の介護保険外サービスも検討しましょう。日常の家事や通院などの外出サポート、留守中の見守りなど、柔軟に対応できるサービスが多くあります。
ただし、自費サービスは高額な場合が多いので、経済的な観点からも計画的に利用しましょう。介護が必要な方だけでなく、介護者も使うと考えると、宅配クリーニングや食材宅配サービス、作り置き代行サービスなど、選択肢が広がります。
対処法5:自分にあったストレス解消法を見つける
リラクゼーションやストレッチ、適度な運動など、自分にとって心地よく感じる方法を探してみましょう。
人によっては友人とのおしゃべりや、仕事や介護から離れた趣味を持つなど、環境も含めた変化の場に身を置くことで、良い気分転換になることもあります。
自分自身が「居心地が良いと感じる場所」、「安心できる時間」、「心が満足する物や事」を見つけていきましょう。
ためしてみて「セルフハグ」
セルフハグとは、自分で自分を抱きしめることです。
ハグはセルフでやっていても、オキシトシンやセロトニンなど、幸せホルモンが脳内から出され、幸せな気分になる効果があります。
「よくやっているよ」「大丈夫だと」と自分自身に言葉を掛けながら行うと、不思議と気持ちが穏やかになっていきます。
まとめ
「介護は家族がやるべき」や「介護は親孝行」という考え方を変えることも、介護のストレスから解放されるために大切なことになります。
現代は親の介護を支える家族が激減しており、家族の力で介護を背負うのは難しい状況です。介護者自身が「自分の生活」を優先し、その余力で介護ができるような体制を構築できるよう、介護をコントロールしていく発想を持つと良いでしょう。
そのためにも、介護の心配や不安があれば早めに地域包括支援センターへ相談し、介護保険サービスの利用につなげていきましょう。
ストレスを遠ざけるような環境・体制づくりが、これからの家族介護には必要となっていきます。